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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
仙台帰省・宮城の旅5

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訪問! 未来ホーム

 ついに、ついに衣笠さんの実家前に到着。緊張だ。緊張しかなく唾を飲む。


「うわ、マイクロバス停まってる。まったくもう」


 家の脇にはレンタカー会社のロゴマークが貼りつけられたマイクロバスが駐車されている。つまるところ、家には大勢の人が集まっていると思われる。


「バスが停まってると衣笠さんに何かあるんですか?」


「えぇ、ちょっと」


 と、呆れ顔の衣笠さん。



 ◇◇◇ 



「ただいま~」


「おじゃまいたします」


 玄関のドアノブは上下二つの鍵穴があるがその役目は果たしておらず、彼女はインターフォンを鳴らさずそのまま扉を開けた。屋内へ入った途端、線香と酒の臭いがした。一瞬、親しい面々が集まってどんちゃん騒ぎをしているのかと思ったがそうではないようで、聞こえるのはテレビと思しき音声のみ。


 そんなことよりも僕は成人してから初めて女性の実家におじゃまするという大イベントに緊張して胸の鼓動が速まっている。なんとも言葉には表し難い感情だ。


「あらあら未来おかえりなさい。こちらがお客さま?」


 開扉に気付いたのか、玄関右手の部屋から少々腰の曲がったお婆さんがのそのそと出てきて迎えてくれた。第一印象としては、のんびりした雰囲気漂う田舎のばぁちゃんだ。


 僕はすかさず鞄から名刺を取り出し、


「はじめまして。日本総合鉄道で駅係員をしております、本牧と申します。本日は突然押しかけてしまい……」


 そこで、言葉をさえぎられた。


「あらあら国鉄員さん!? 未来がそんなご立派な殿方を連れてくるなんて」


「ちょっ、ばぁちゃん!? そうやって肩書き判断するのは本牧さんに失礼だっちゃ」


「おやそうかい。でも国鉄といえばエリートさんの集まり。さぞ苦労して入られたのでしょう?」


「あはは、優秀な人材は多く居りますが、僕は運良く入社できただけです」


 日本では安定の象徴として知られている所属企業の名を告げるとよくそういう反応をいただく。企業よりも僕自身の人格を見て欲しい、という思いはあるものの、好意を抱いている女性と添い遂げられるなら、これも判断材料の一つとしていただいて一向に構わない。


「さぁ、こんなところで立ち話もなんですから、どうぞお上がりになってください。お風呂は掃除して湧かせておきました」


「それはどうもありがとうございます。お手数をおかけしてしまい大変恐縮です。よろしければこちら、皆さまでお召し上がりになってください」


 衣笠さんの実家に宿泊など予定外であった僕は横浜や鎌倉の土産品を用意しておらず、仙台駅で慌てて購入した『萩の月』を差し出した。大福ほどのふんわりまるいスポンジ生地にカスタードクリームを閉じ込めた仙台銘菓で、あごが弱くても食べられるだろうとこれを選んだ。


「あらまあ萩の月なんて久しぶりだっちゃ。ど~うも、ありがとうございますねぇ~」


 恐る恐る廊下へ上がりお祖母さまが出てきた右手の部屋を覗き見ると、卓上には開栓済みの酒瓶や缶ビールや平らげられた大皿小皿。座布団には衣笠さんのお祖父さまと思しき老父がいびきをかいて横たわっている。


「お見苦しいところを申し訳ないねぇ。片付けておきますからごゆっくりお風呂に浸かっていてください。未来も手伝ってくれるかい?」


「しょうがないなぁ。本牧さんはホント、本当にごゆっくりどうぞ!」

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 時系列の都合で花梨から再び未来たちのお話に戻りました。のんびりした田舎の暮らしをお楽しみください!

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