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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
仙台帰省・宮城の旅2
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仙石線

 車両基地を出た私たちは、最寄駅から高山さんたちがメンテナンスしている仙石せんせき線の電車に乗って石巻へ向かっている。仙石線は仙台の中心部、あおばどおり駅から沿岸部を経由して石巻までを結ぶローカル線。といっても地元の野球チーム『東北楽天とうほくらくてんゴールデンイーグルス』のホームグラウンド前や観光地の松島海岸まつしまかいがん、工業地帯や住宅地と人口の多い地域を抜けるので、乗客の半分は着席できない区間がしばらく続く。


 車両はピカピカで一見新しく見えるけど、実は山手線やまのてせんなど首都圏の主要路線で活躍していた車両を改造したのだとか。


 混雑区間を抜けた冷房の効いた電車は、カーテンを下げて窓からの陽射しを遮りながらカタンコトンと平野部をゆっくり進んでいる。しかしドアに嵌め込まれた小さな窓にはカーテンがなく、時々眩しくて目を瞑る。


 夏休み中で学生の姿も見当たらず、車内は数人のお年寄りが散り散りに、バネの効いた緑色の座席にのほほんと腰掛け、電車の揺れに合わせて上下にふわふわ揺れている。


 私と本牧さんもレールの継ぎ目を通過する度、わずかに腰が浮く。


「なんかいいですね、こういうのどかなところ」


 窓に背を向けて座る7人掛けのロングシート。空いているから真ん中に座って、少し広めに場所を取る。本牧さんはシートに両手の平を押し当て、ぼんやり天井を仰ぎ、穏やかな笑顔で言った。


 あぁ、その左手にそっと触れたいな……。


「でしょう? 被災地も見に行きますけど、今日くらいは田舎の景色を眺めてのんびりして行ってください」


 ふふっ、と自然な会話の中で思わず笑みが漏れる。好きという気持ちは、そう簡単には消えない。


「そうですね。せっかくの旅行だし、楽しみましょう。あ、衣笠さんにとってはただのお出かけですよね」


「いえ、石巻はなかなか行きませんし、慣れた場所でも行く度に新しい発見があったりするので楽しみです」


『ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、石巻です。石巻線はお乗り換えです。お忘れ物なさいませぬようご注意ください』


 車掌さんの放送が流れたとき腕時計を見ると、14時46分。


 何度見ても悲しい現実と、楽しい旅のひととき。この街ではその両方が、私たちを待ち受けている。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 石巻へは仙石線のほか、仙石線と東北本線を経由して仙台からショートカットする仙石東北ラインも開業し、とても行きやすくなりました。


 また、石ノ森章太郎氏の作品を主とした資料館、『石ノ森萬画館』もあり、楽しいだけではなく、創作をしている者として学べることがたくさんありますので是非一度足を運んでみてください!

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