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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
仙台帰省・宮城の旅2
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未来、車両基地を見学する

 本牧さんと高山さんの応酬が一段落したところで、とうとう車両とご対面するときが来た。私と本牧さんはピカピカな来客用ヘルメット、高山さんは使い込まれて傷付き泥や機械の汚れが付着したヘルメットを被り、高山さんの先導により車両基地へ案内された。


 蒸し暑い。ヘルメットを被ってるから余計に暑い。遠くにセミの合唱が聞こえる。外に出たばかりだけど事務所棟に戻っていちご練乳のかき氷でも食べたい……。


 きっと駅のホームに立つ本牧さんと、ここで車両の整備をしている高山さんは夏でもお外でお仕事をしているから、暑さなんてへっちゃらなんだろうなぁ。


 陰もなく開けた構内には10本の線路が数百メートル奥まで並行していて、私たちのすぐ脇を含む数本の線路には銀色の車体に青と水色の帯を纏った4両編成の車両が電源を落とした状態で留置されている。中には全てのドアを開けて、清掃員の方々が車内でせっせと掃除機をかけたり、先頭車両の前に固定された鉄製の台に上がってハンドワイパーでフロントガラスを水拭きしている編成もある。プロの高度な技術を要する清掃で鉄道を支える大切なお仕事だ。


 線路と線路の間のコンクリートブロックで継がれた通路を、線路上から転がってきた砂利バラストに注意しながら進む。


 しかし周囲を見回してもお目当ての古い車両は見当たらない。


 電車の足回りを間近に見るのは4月1日に駅で線路へ転落したとき以来。あのときは反対方向の電車がちょうど停車していた。


 それを思い出して、思わず前を歩く彼の背中に目を遣ってしまう。


 いまは本牧さんのことを考えるとモヤモヤしたりイライラしたりするけど、きっと彼が私の知らないところで私には思い至らないようなことをしてくれたから今日、お客さまが探し求めている車両が眠るこの基地まで来られた。本牧さんだけじゃなくて、高山さんや松田さん、百合丘さんや……成城さんも、お力添えをしてくれていると思う。でも最終的に結婚式を成功させられるかは私に懸かっているから、これから件の車両をしっかり見て、撮影して、式のイメージを固めたい。


「いま鍵を開けるから暫し待っていておくれ」


 留置車両を横目に辿り着いたのは、基地の隅にポツリ佇む、全長百メートルはありそうな長屋。私たちから見て右手の線路が長屋と繋がっていて、車両を収容するためのものだと一目見ただけでわかる。


 高山さんはシャッターの鍵を開けると、両手でそれをぐいっと持ち上げた。ガラガラガラッと音をたてて開くシャッター。さぁ、動く式場のお目見えだ。

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