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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
仙台帰省・宮城の旅2
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宮城野で待ち合わせ

 震災後、僕は初めて仙台を訪れた。あれから3年以上の年月が流れ、地震で損壊した仙台駅は何ら違和感なく修復されている。


 多くの人々が行き交う仙台市の中心部は、のどかな風景が広がっていたり澄んだ空気が美味しいなんてこともなく、ターミナルには十数台のバスやタクシーがぎっしり停車している。高層ビルが密集し、周辺には大型家電量販店など栄えた都市を象徴する店舗も多い。


 駅構内の店舗では当然電子マネーでの買い物や飲食が可能で、関東地方ではお馴染みの、スマートフォンのような形をした液晶ディスプレイをタップしてドリンクを購入するタイプの自販機もある。


 月曜日の11時30分。天気は曇り、湿気を帯びモヤモヤした空気が街を包んでいる。僕はいま、クールビズ姿で仙台駅の改札口を出てエスカレーターを下り、衣笠さんと待ち合わせているペデストリアンデッキに着いた。このペデストリアンデッキは日本一の面積を誇り、パルコやロフトといった駅前に構えるいくつかの大型店舗に直結している。


 東西に伸びる大きな駅舎を出てすぐ、見慣れた女性の姿を捉えた。格好はいつも通り、白いシャツにベージュのリリースカートと、同色のヒール。これから向かう知らぬ職場に緊張しているのか、股の前に手を組んで肩をすぼめている。


「おはようございます」


 彼女までの距離残り5歩。普段よりオドオドしている衣笠さんに努めて笑顔で声をかける。


「お、おおおはようございますっ! 遠いところお疲れさまです仙台へようこそきのうはよく眠れましたかっ!?」


「プッ……」


「ちょ、なに鼻で笑ってるんですか!? 私が挙動不審なのは重々承知ですけどそれを華麗にスルーするのが大人のたしなみかと!」


 必死だ。衣笠さん、仕事と自己弁護にはとても必死な人だ……。


「すみません、衣笠さん遠目で見てるだけでも面白いので。おかげさまで、今日が楽しみだったのできのうは努めてよく眠りました」


 おっといけない、笑いが堪えられなくて歯切れの悪い喋り方になってしまっている。


「そ、そうでしたかっ!? えと、何が楽しみで……?」


「色々ですよ」


「色々……? お仕事の後、どなたかとお約束でも?」


「いえ、特に」


 上目遣いで訊ねてくる衣笠さんに心動かされつつ、なぜそんなことを問うのかとモヤモヤした。あなたと行動を共にするのが楽しみに決まっているでしょう?


 仙台駅から電車で移動し、旧型車両が眠っている車両基地に到着。ここまでの間、互いに何かを意識していて、少々気まずかった。


「よーお久しぶりだな本牧ー! おヌシ元気しておったか!?」


 事務所棟の玄関で僕らを出迎えてくれた少し懐かしい顔。彼が車庫の案内人だ。

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