◇ミルキーウェイを見上げて
日付が変わる頃までじいちゃんと愉快な仲間たちのドンチャン騒ぎに付き合わされていた私。1時過ぎに仕事へ出ていた両親が帰宅したので先にシャワーを浴びさせ、ようやく私のからだがさっぱりしたのは午前3時。
虚ろな目で薄暗い蛍光灯が照らす台所の冷蔵庫を開け、豆電球だけぽつりと点いた隣の居間から筒抜けてくるじぃちゃんたちのいびきをBGMにタンブラーに注いだ麦茶を飲む。
なんだかバタバタした一日だったなぁ。あさって、厳密には明日はお仕事だから、少しゆっくりしたい。
けれどまだ眠れる気はしなくて、気分転換に外の空気を吸おうとパーカーを着て、玄関から一歩だけ出てみた。東北の夜は真夏でもひんやりしていて、深呼吸をすると体内が浄化されるのを実感できる。
移動時間1秒の異世界トリップ。
見上げれば、そこに広がるのは月のない満天の星空。虫の声に混じって、星たちの瞬く音が聞こえそうだ。
そのど真ん中を流れるのはミルキーウェイ。織姫さまと彦星さまはどこにいるのかな。無数四方八方に散りばめられた光の粒の中ではなかなか探し当てられない。
鎌倉では見られないこの星空を、彼にも見せたいな。
他に好きなひとがいるかもしれないのに、そのひとと付き合っているかもしれないのに、ついそんなことを思ってしまう。
苦しくなって、泣きたくなって、息が漏れて、全身の力が抜けてゆく……。
どうして周りの子たちは彼氏ができて、別れてはまた、ほかのひとと付き合えるのかな。私なんか、ようやく巡り会えたたったひとりに四苦八苦して、いまにも壊れそうなのに。
「あっ……」
流れ星。
それは願いを浮かべる間もなく消えゆくから、尊くて、美しい。
宇宙の塵に過ぎないそれは、ミルキーウェイの果てまで旅をするのかな。それともここからはとても見えない遥か彼方で、新しいお星さまに生まれ変わるのかな。
私も生まれ変わったら、好きなひとと結ばれるのかな。でもそんなの気が遠すぎて、とても待てない。それに、どん臭い田舎娘だけど、ひとを幸せにする喜びを知れたいまの自分を大切にしたい。そんな私に寄り添って、共感して、なんでもない日常の幸せを分かち合えるひとと、一緒になりたい。
「はぁ、つらい……」
囁くほどの声は思いのほかしっとりした空気に馴染んで、少しのあいだ、手の届く範囲に漂った。
どうかお星さま、私にも幸せをくださいませんか。
22歳の夜、あなたと同じ空の下。私はひとり、叶いそうもない淡い想いを馳せた。
お読みいただき誠にありがとうございます!
今回のお話は予定していたお話に割り込む形で、源まめちちさんからいただいたイラストをベースに描かせていただきました(読み通り、まめちちさん大物になったぜ……。
そんな感じで周囲の方に刺激され、尻を叩かれている気分です。




