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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
窓口の混雑を緩和せよ
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NFTを始めてみたら?

 クリスマスが過ぎてあっという間に年を越し、七里ヶ浜で初日の出を拝み、近所の神社や鶴岡八幡宮を参拝して正月休みが終わった。


 少しずつ、日の入りまでが長くなった。


 律儀に1月4日から仕事初めの日本総合鉄道本社、支社。朝の電車は空いていた。


 出社して、同じ部署の面々や対面した人々、そして定員4名の小さなミーティングルームで待ち合わせた成城さんと顔を合わせ新年の挨拶を交わした。


 昨年成城さんから僕に打診があった、窓口の混雑緩和策を話すためのミーティングだ。


「NFT?」


「そうです、これがNFTです」


 サンプルとして、僕は胸ポケットからスマホを取り出し、自身が保有するNFTを成城さんに見せた。七里ヶ浜から富士山方面を臨む夕暮れの写真だ。


「NFTは知ってる。イラストレーターを取り巻く環境がますます厳しくなる中で、長期的な収益を得るためには有用だと思う。そこじゃなくて、変なおじさんみたいなフレーズで言わないでっていうこと」


 噴き出しそうになるから。彼女はボソッと付け加えた。


 NFTとは、平たく言えば資産価値を付けられる、ブロックチェーン技術を用いた改竄が難しい代替だいたい不可能なデジタルデータ。


 例えばイラストレーターの成城さんが何らかのイラストを描き、それを10万円でクライアントに販売。クライアントはそのイラストに15万円の値を付けて第三者に転売し、収益を得たとする。


 ここまでだと悪質な転売屋に見えるが、NFTの場合は転売した時点で著作者である成城さんにも収益が発生する。


 ブロックチェーンなので、成城さん、クライアント、クライアントの転売先それぞれがネットワークで紐付けされ、転売先が更に転売すればその当人も紐付け、成城さんには転売の都度収益が発生する仕組み。


「NFTを、チケットレス乗車の特典にするんです」


「ああ、なるほど……」


 成城さんは僕の言いたいことを理解したようだ。


 日本総合鉄道は沖縄県を除く46都道府県に路線網を抱える企業。地域ごとに異なる特色、景色があり、車種も様々。


 そこで、それらの写真やイラストをNFT化してチケットレス乗車の特典として利用者に付与する案を僕は思いついた。未来とみなとみらいへ出かけた際、根岸線の車窓を見て浮かんだ。


 画像は鉄道車両でも、駅舎でも、沿線の景色でも良い。それらを保有し続けるか転売するか破棄するかは利用者に委ねる。


 付与する画像はランダムなので、複数回利用すれば受け取る画像は被る可能性があるが、一つひとつにシリアルナンバーがあるため、転売し、それで得た収益で他の利用者が出品したNFTを購入しても良い。


 なお通貨は現金ではなく、日本総合鉄道が発行するポイントカード、ICカード、クレジットカードを利用した際に発生する1ポイント1円として使える既存のポイントサービスとする。


 このポイントはICカードにチャージしたり、特急や新幹線、特別車両の電子チケットとして交換できるので、買いものや鉄道、バスの利用といった日常生活に有用だ。


 その旨は成城さんに通じたと思うが、一応説明した。


「そうね、資産価値が発生するなら鉄道ファンだけでなく、幅広い層に利用してもらえそうね。幸いにもうちの会社、ITには積極的だし」


「鉄道を名乗るほぼIT企業ですからね」

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