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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
窓口の混雑を緩和せよ
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リスタートクリスマス

 クリスマスらしいことをしようとすると人混みがセットになるみなとみらいで、結局私たちはいつも通りのヨコハマ歩きをしていた。


 赤レンガ倉庫、ちょっと苦い思い出のある山下公園、港の見える丘公園と、その付近の洋館めぐり。結局今回も、単独行動でもお馴染みのコースを歩いた。


 そうだ、私たちの日常は、遠くの人にとってはワンダーランド。


 なら仕方ない、きょうくらいは特別な空間を譲ってあげよう他所者どもよ。


「ククククク……」


「どうした?」


「あれ? 心の声、漏れてた?」


「急にほくそ笑み出したから」


 さっき幽霊がスポーツカーに乗り込んだのを見て笑っていた人にそう言われた。


「ヨコハマに馴染むとスレた人間になるというのはほんとうのようですね。マ◯コさん、私は仙台からヨコハマや鎌倉に来て、穢れてしまったようです」


「こんどは田園都市線沿線に住む?」


「うーん、東横線もハードル高いし、目蒲線も池上線も決して地価は安くない……やっぱり私はそこそこ安くて彩り豊かな湘南辺りがちょうどいい。アニメの聖地たくさんあるし」


「それは良かった。僕も実はあまり引っ越したくないんだ。実家は居心地悪いけど、極楽ごくらくとか七里しちりは落ち着く。結局地元から離れる気がしないんだよ」


 極楽は極楽寺付近、七里は七里ヶ浜。埼玉の七里ななさとではない。


 元町・中華街駅を目指し、外人墓地や横浜地方気象台、コクリコ坂を横目に右に逸れ、広場を抜けて、一見小さなビルに入る。ここ、実は山の頂上に突き抜けているから小さく見えるだけで、遥か地下の駅へ続くそこそこ高いビルだったりする。


 エスカレーターを何度も乗り継いで、元町・中華街駅に降り立った。ここはみなとみらい線の起点で、地下駅。私もだいぶヨコハマに詳しくなった。ヨコハマとカタカナ表記をするときはみなとみらい付近、それ以外の横浜駅西口とか港北ニュータウンとか戸塚とか諸々は『横浜』。


 これに近いのが横須賀で、横須賀駅や横須賀中央駅付近の港付近を『ヨコスカ』、それ以外は『横須賀』。


 せっかくだからクイーンズスクエアでも見て帰ろうと、みなとみらい線をみなとみらい駅で下車、地上へ向かう途中で青く光る大きなクリスマスツリーを見上げ、職場の近くでいつも見ている観覧車を眺め、桜木町駅からわいわいした人で混雑した根岸線に乗って大船に戻った。


 贅沢な景色も日常化すると、好きな人といっしょでもロマンをあまり感じなくなる。インスタで誰かが上げた映えスポットの写真を見ても羨ましいと思わない。


 でも、日常の幸福感は高いところで安定する。開放感や非日常感は、塞ぎ込んだ日々の蓋に、酸素を吹き込みやすくしてくれる。


 ああ、悠くんも、そういうことをしたいんだな。日常の嵩上げ。


 悠くんの理想が実現したら、鉄道会社はどう変わるんだろうな。


 やさしい世界をつくりたい。


 その想いを、私は支えて行きたくて、私自身も幸せになって欲しいと想う人の門出を彩りたい。


 以前は無差別に人を幸せにしたいと思ってたけど、そこはちょっと、いやけっこう、心変わりした。

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