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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
窓口の混雑を緩和せよ
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ゴーストクリスマス

 人混み、それは文字通り、人で混み合っている場所を指す。


「ああ、いるな、たくさん」


「急に人が増えて人酔いでもした?」


 僕と未来はいま、遊園地前の横断歩道で信号待ちをしている。一先ずの目的地はその向こうにある大型商業施設。ここでランチにしようという話になった。


 ほんとうはもう少しお洒落なカフェやレストランにとでも思ったが、クリスマスシーズンでどの店も満員、長蛇の列。百合丘さんにたかられたときはガラガラだったクイーンズスクエア内にある店もきょうは満席。


「いや、幽霊がいっぱい。よく幽霊には脚がないっていうけど、脚しか見えない霊もちらほら」


 都会には生きている人間も霊も多いが、横浜は霊が好む水辺の街だからか、僕が見てきた中では都内の山手やまのて線沿いの街より多い。


「幽霊さんもヨコハマのクリスマスを楽しんでいるのか、それとも何変わらぬ日常を淡々と繰り返しているのか」


「さあね、けど霊にだって永遠はないから、どこかで成仏するか、腐敗して悪霊になるか」


「悪霊、かあ……」


 信号が青になった。横断歩道上には青いスポーツカーが渋滞により足止めされている。百名以上の歩行者がそれを避けながら歩いている。幽霊たちも律儀に避けている。お、一人助手席に乗り込んだ。楽しいドライブの始まりだ。


「幽霊さんがクルマにでも乗った?」


「よくわかったね」


「悠くんがクルマを見ながら噴き出しそうになってるから」


「ごめん、面白くてつい」


 ニヤニヤと気色悪く嗤う僕を、未来は穏やかな笑みで見ていた。


 商業施設の中は案の定混雑していた。人と人がぶつかりそうなほどだ。こちらも多くの飲食店で行列ができている。


「行列だなあ。ごめん、どこか予約しておけば良かった」


「ううん、予約でも人がいっぱいいる空間は好きじゃないから。新幹線で隣に知らない人が座るのも苦手」


「すごくよくわかる」


「あ~あ、仙台で行列といえば牛タンかラーメンくらいなのに」


「こんど人気のうなぎ屋さんにでも行く? 行列ができるだけのことはあるお店だよ」


「行きたい! 行列ができる店のうなぎ!」


 結局僕らは辛うじて二人席が空いていたカフェに入り、未来はチーズホットドッグとアイスキャラメルラテ、僕はサルサドッグとアイスティーを飲食した。


「あ、クリームソーダもある。飲みたい」


「僕も」


 ふふっと笑い合って僕らは、クリームソーダを二つ頼んで飲んだ。スタバ程度に洒落たカフェで飲んだ、飾り気ない味だった。

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