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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
窓口の混雑を緩和せよ
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未来の館

「ありんこを見ていた私たちが、今度はありんこに」


「いや、高いところにいただけで、僕らはありんこのままだよ」


「そういえばそうだ。高みの見物をしていただけでありんこはありんこ。大きくなった気になって、実は全然大きくなっていなかった。私もまだまだお子ちゃまです」


「僕もまだまだお子ちゃまだ」


「人間死ぬまでお子ちゃまです」


「そうだね、年を取って大きくなった気になってはいけないね」


 ランドマークタワーの展望台から地上に下りた僕らは続いてそのすぐそばにある科学未来館に入った。潜水艦から宇宙まで幅広く学べる大型施設だ。


「未来館。それは私の館……」


 窓口でチケットを購入し中に入ると、未来が若干厨二めいた独り言を発したので聞かなかったことにした。


 館内は潜水艦から宇宙船まで幅広い乗り物についての展示がある。


 順路通りに進むとまず最初に鉄道車両の展示がある。透明のショーケースに高さ150ミリ、長さ500ミリ程度の車両の模型が収納されている。モデルはとあるメーカーが開発した現行の最新車両だ。日本総合鉄道の車両ではない。


 鉄道会社の内情を知る僕は、車両はどんどん新しくなって、鉄道以外の部門でも新サービスが次々と始まっているが、半世紀以上前の体質が未だ抜けない職場もあり、そのギャップに悶々とした。


 未来は模型を見て、特に何も言わなかった。


 ランドマークタワーの近くにあるからなんとなく来てみたが、あまり興味が湧かなかっただろうか。


 いや、興味のある僕も無言だから、そうとも限らないか。


 館内を一通りじっくり見学して、15分間のムービーも観て、科学未来館を出た。この辺りは自動車は多いものの人通りは少ない。周りに僕ら以外見当たらない。


「潜水艦か……そういえば私、山頂には何度か行ってるし、さっきはランドマークタワーから下々の者どもを見下ろしたけど、海の中の世界は知らないなあ」


「ダイビングか。あれ、チューブを咥えなきゃいけないんだけど、咥えたまま口を開けちゃいけないからけっこう窮屈だし、息が苦しいんだ」


 広い歩道で二人、手が触れ合う程度の距離を保って並んで歩く。横浜の都市部で並んで歩いても邪魔にならない場所は珍しい。


「ふむふむ、言われてみればそんな気もする。海の中は綺麗だった?」


「中学の体験学習でプールの中を見た」


「ゴーグルでも同じやつだ」


「あれがトラウマで、伊豆に行っても海外に行ってもやる気が起きなかった」


「伊豆かあ、富戸ふととか大瀬崎おせざきとか、有名なダイビングスポットがあるね」


「綺麗なんだろうな、きっと」


「人生のやりたいことリストに追加ですな」


 そんな会話をして歩いていたら、僕らはいつの間にか人混みの中に戻っていた。

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