69階の地平
桜木町といえばランドマークタワー。パシフィコとかカプヌとかいろいろあるが、とりあえずランドマークタワー。僕は以前、取引先のある70階に上がったが、一般客が入れるのは地上273メートル、69階の展望フロアまで。ビルの高さは296,33メートル。
エレベーターレディーのいるエレベーターは、時速45キロで69階まで一気に上昇。急激な気圧変化で耳に圧迫感が生じる。
「おお、高い高い」
エレベーターを降りると目の前が大窓。神奈川県育ちの成人なら何度か見ているであろう景色だが、宮城県育ちの未来は初めて来たらしく、圧倒されている。
湾曲した地平線。視界の果て、およそ40キロ先まで建物がぎっしり。空気が澄んでいて、浜松町や隅田川のタワー、浦安も見える。
なお反対側へ行くと近くに山が連なり、横浜は地方都市だと実感する。
下を見れば、電車がイトミミズほどにしか見えない。自動車はシロアリ程度。
僕の周りにいる昔の人は広大な景色を見てよく、自分の悩みなんてちっぽけだ、悩んでいるなんてバカらしいと言う。
僕からすれば、それならいま僕の眼下で事故や事件が発生しても、絶えない災害、戦争も、地球や太陽系の滅亡も、宇宙規模では大したことない。
そういった事象を、どこまで許容できるか。許容できるようになるか。人生で試されることの一つかもしれないが、生憎僕は見ず知らずの他人の事故や事件でも胸を痛める質だ。
だが一方で、人生は延々と悩んでいられるほど暇でもない。
どこかで前を向かなければ闇に堕ちる。
前を向いても真摯であるほど障害がある。
何もかもを乗り越えた先は、果たして絶対的幸福に満ちているのだろうか。
ランドマークタワーを出た僕らはそのままクイーンズスクエアへ進み、横浜散策を楽しむ。
いい加減楽しみに慣れろ僕。
難しいことばかり考えているから堂々巡りになるんじゃないか。




