スーパーギャル百合丘花梨
未来ちゃんと落ち合って、わたしたちは駅に直結している2階のエントランスから4階建ての大型ショッピングモールに入った。館内には人がウジャウジャいる。オバハン、母子もいるけど、意外にも中年男の姿も目立つのは時代の流れかもしれん。うちの会社から流失した客たちだきっと。電車通勤やめてリモートワーク。わたしも満員電車は乗務するのも客として乗るのも嫌い。
エスカレーターで3階へ上がって、数十メートル歩いてまたエスカレーターに乗って4階へ上がり、館内端っこの映画館に着いた。
電子チケットを購入済みなので、パンフレットとポップコーン、塩とキャラメルのハーフ&ハーフのポップコーンとドリンク(わたしはセブンアップ、未来ちゃんはウーロン茶)のセットを買って劇場内へ。
鑑賞したのは西洋の少女たちが大人たちの陰謀に抗い銃撃戦を繰り広げるガンアクション。上映時間110分、体感時間もそのくらいだったけど、内容が濃密で間延び感なく充実感たっぷり。
「うーん、わたしもあれくらい機敏に動けたら、何かこう、人生が好転するかもしれない」
「未来ちゃん、意外と銃撃戦とかできそうな感じがする。本牧さんよりは長く生き残ってそう」
劇場を出て、館内にある目当ての洋食屋へ向かう途中の会話。
「そうかもしれない。彼はけっこう臆病だから。頭脳で生きていくタイプ」
「だね、最近調子どう? 本牧さん。転勤を知らされたときは意気消沈してたけど、相変わらずそんな感じ?」
「うん、そんな感じ。やりたいことが実現できそうになくて、新しいやりたいことも見つけられなくて行き詰まっちゃってる。自分が生きている意味を見出だせないって」
洋食屋に到着して、ウエイトレスに席まで通された。注文をして話を再開。
「やりたいことが会社の中にあると、それが叶わないとわかったときの絶望感は個人事業者より強いかもね。いくら努力しても、自分の力ではどうにもならないことが多いから」
「か、花梨ちゃんが賢いこと言ってる……!」
「会社入って体力的にも精神的にもクソキツい日々を送るようになってからよく思うんだよね。もし働かなくても衣食住に不自由しないで生きていけるとして、それでもわたしはイラストを描いていたいって、ゾンビみたいな顔しながらいつもそんなことを考えてる。本牧さんからは、それがぽっかり抜け落ちちゃったわけだ。そりゃしんどいっしょ」
「実はわたしも最近そんな感じで……」
「未来ちゃんもか。まあ、そうだね、何もしないでただゴロゴロするだけの休日を過ごしてみたら、何か見つかるかもね」
「旅行とか気分転換もしないで?」
「極力なんもしない。食事は簡単なものかデリバリーか外食」
「朝はコンビニのおにぎり、昼はビールとラーメン、夜はアニメ見ながら宅配ピザ」
「廃人だな。でもそんな時期が人生の中で時々あってもいいとわたしは思う。日本人は根詰める人多すぎ。わたしも日本人だけど」
「乗務してイラスト描いてるスーパーギャル」
「いや、わたしもマジ休みたいわ」




