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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
はじめてのウエディングプランニング
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百合丘さんと成城さん

 3ヶ月ぶりの有人改札の裏側。この世のどこかにあるという指令室からの運行情報が絶えず響くそこには病人や4月の私のような怪我人、ご入り用のお客さまを休憩させるためのソファーとベッドが一台ずつ設置されている。その他、鉄製の棚の中には駅構内の様子を映すモニターや、何に使うのかわからない機器類が所狭しと並んでいて、本牧さんたちはとても難しいお仕事をしているんだと思ったのを覚えている。


『確認連絡怠るな! いつも心に命を想え!』


『ありがとう。その言の葉に想いを込めて』


 入室すると真っ先に視界に入る標語ポスターは新しいものに貼り替えられたようで、前者には線路上で手をビシッと指差確認喚呼をしているヘルメットと安全チョッキを纏った保線員さんの写真。進路ヨーシ! とか言ってるのかな。厳しい教育と訓練を受けたプロフェッショナルって感じがする!


 後者には窓口でポニーテールの女性駅員さんが端末をタップしながら笑顔を向けているイラストが描かれている。童顔でありながら色気を感じる繊細なタッチで、女性社員さんが描いたのかなと想像。


「おっ、お久しぶりです松田さんっ! 4月には大変お世話になりましたっ! あの、こちら、よろしければ皆さまでお召し上がりくださいっ!」


 噛まなかった! 上擦ったけど今回は噛まなかった! ちょっと成長したぞ私!


 あ、奥のきっぷの発売窓口の扉から女性の社員さんが二人入ってきた。タイミングを窺って挨拶しなきゃ。


「うえええっ!? こんなにいいの!? これ高いのおじちゃん知ってるよ!」


「あ、はい、お世話になりっぱなしですので」


 と、お出迎えしてくれた助役の松田さんに差し出したのは、48枚入りの鳩サブレー。サクサクした食感でありながら、口中でふわっ、サラッと溶ける、甘さのしつこくない鳩を型どった鎌倉名菓。仙台土産の定番が萩の月ならば鎌倉はこれだと確信し、大船の駅ビルで購入した。


 本牧さんにこれを買うと言ったらお気遣いなくと止められたけど、私の仕事とは無関係な人を巻き込んでしまったのでと貫いた。


「ほんと!? いやぁ悪いねありがとさん! こんど呑みに連れてってあげるよ」


 飲み会!? 私、酔うと本性が出るって小百合さんから言われたからちょっと……。どんな感じに変わるのか訊いても教えてくれないし。


「松田助役ぅ、オンナノコは~、呑みに行くよりもぉ、きゃあわいいお財布とかバッグとか買ってあげたほうが喜びますよぉ。ですよね、成城なるしろさん」


「そうね~、私は百合丘ゆりおかさんみたいに可愛いものよりは、高級ブランドが嬉しいかしら」


 彼女は髪をくるんくるんと弄びながら、クールな口調で松田さんに目を遣った。


 す、すごい。私、50代のオジサマにそんな態度取る勇気ない。私の職場にはいないタイプの高飛車な方だ。やっぱり大企業にはプライドの高い人が多いのかも。


「ハッハッハッ、君たちみたいな現金な輩はブートキャンプにでも送り込んだほうが良さそうだな。しばらく有休を取りなさい」


 和やかムードの応酬がしばらく続いて、私は松田さん、2名の女性社員さんの合わせて3人と名刺交換をした。


 きゃぴきゃぴしてて、153センチの私より少し背の低い百合丘花梨(かりん)さん。仕事中はふわりとしたセミロングヘアをシンプルなピンクのリボンでポニーテールに結っている。高卒の新入社員で19歳。


 百合丘さんと一緒にきっぷの発売窓口から入ってきた、営業主任の成城英利奈(えりな)さんはスッと機能的に纏まったミディアムヘアで、いかにもビジネスウーマンな雰囲気の26歳。駅務歴は本牧さんより1年長く、彼の指導も担当したらしい。


 小百合さんとは違ってドSな感じの凄く厳しそうな人だな。カラダは引き締まっていて、女性が憧れる見事なライン。スポーツジムに通っているのか、ジョギングでもしているのか、想像が膨らむ。


 私も3年後にはこんなオトナなレディーに……。うん、無理だ諦めよう。 

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