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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット
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牛丼屋の女神

 成城さんや百合丘さん、その他同期などがキャリアアップしてゆくなかで、僕は取り残された。別に羨ましいとは思わない。キャリアアップが僕の至上命題ではないからだ。


 僕がジレンマを抱えているのは、行き先を見つけられないから。


 酔っ払いオヤジを天国に見送ったと報告した翌夜、未来に人生相談をしたら「そもそも人生に行き先を探す必要ってあるのかな?」と言われた。


 川が流れるように流されるまま、という概念があるのはこれまで目標を持って生きてきた僕でも認知している。学校でも会社でも、なんとなく進学して周りがしているからと就活して、組織の一員になって、周りが受けているからと昇進試験を受けてという流されるままの人間のほうが僕の周りには多い。


 だがそういう生き方は、僕には怖いんだ。命が尽きそうな気がして。


 ラーメン屋の移転先を探しているときは人の役に立っている実感があって生きている感じがした。現在、店は軌道に乗って経営は安定しているという。周辺店舗も閉店はしていない。


 これは心の中で、人生の実績として留めておく。


 さて次だ。次なる目標は何にするか。


「急がなくていいんだよ」


 油揚げ、玉ねぎ、ワカメの味噌汁をすすった未来に言われた。金曜日、休前日の19時、きょうが休日で明日は出勤日の未来と食事をしていた。


「頭では理解してるんだけどね」


 僕も味噌汁をすすった。ホッとする味。この暮らしを長く続けたいから、僕は生きていたいんだ。よくそんなことを思う。


 翌日、未来が出勤して独りぼっちになった僕は暇を持て余し、茅ヶ崎の街を歩き回っていた。目的なく歩くには、鎌倉や江ノ島周辺と比べて人が少ない茅ヶ崎のほうが僕には合っている。


 人が少ないとはいえ茅ヶ崎市は人口約24万人の保健所政令市。駅構内は人で溢れかえっている。


 改札口を出てとりあえず南口に出た。ラーメン屋の旧店舗はまだ解体されていない。


 空腹感があるので目の前の牛丼チェーンに入ると、目の前のカウンター席で牛丼並盛、お新香、味噌汁のセットをお召し上がりになられているお嬢様が目に留まった。


「三浦さん」


「あら、本牧さん。お久しぶりです」


 三浦さんは少々恥ずかしそうに右手で口を塞ぎ、僕のほうを向いた。


「お久しぶりです。お隣、よろしいですか」


 といっても、彼女の隣以外はテーブル席を含め男性客で埋まっているのだが。


「はい、どうぞ」


 失礼しますと言って着席すると、若い女性店員が湯呑み入りの温かいお茶を運んで来ると同時に注文を訊いてきたので僕はネギ玉牛丼の大盛、お新香、味噌汁のセットをお願いした。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 来週は都合によりお休みさせていただきます。

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