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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット
301/334

新店舗は忙しい

 茅ヶ崎での営業を終えたラーメン屋は、移転作業のため2ヶ月少々休業。スープやチャーシューの仕込みにも時間がかかるそうだ。


 その間、僕や未来、久里浜さん、そして幽霊オヤジは各々の日々を淡々と、しかしラーメン屋の再スタートを楽しみに過ごしていた。松田さんが修行に入るのはもう少し先の話だ。


 10月の、僕が住んでいたアパートの跡地に新しい建物の基礎が造成され始めたころ、ラーメン屋は新しいスタートを切った。僕も未来も久里浜さんも仕事の日で、店を訪れたのは20時を過ぎてからだった。開店初日とあってか店は満席、特に中年層の客が多く、丼の置かれていない席が多いことから、オヤジ一人では回しきれないほど多忙とわかる。


 他方、ここに来る途中に通過した、以前から大船に構えるもう一つの行きつけの店も変わらず繁盛していた。


「いいねえ、繁盛してるねえ」


「この人気が続くといいですね」


「うむうむ、オヤジさんの闘いはこれからだ、という感じですね」


 久里浜さん、僕、未来の順で言った。


「‘俺たたエンド’にはならないようにしないとね」


「俺たたエンド?」


「俺たちの闘いはこれからだ、で終わる漫画やアニメのことです」


「ああ、あるよねそういうの。へえ、俺たたエンドっていうんだ。美守ちゃんまた一つ賢くなっちゃった。賢い可愛いミモリーナ」


 店奥の壁際、四人席に掛けた僕らはラーメンの到着を気長に待ちながら会話をしていた。久里浜さんの隣、通路側には幽霊オヤジが座っている。彼は香食こうじきなのでほかの客のラーメン、餃子、ビールをパクリまくっている。


 閉店は21時、僕らの後に来た客は2名、それぞれ単独での来店。20~30代くらいの男だった。


 彼らはラーメンを食べて速やかに退店、店に残ったのは僕らだけとなった。


「オープン初日にありがとね」


 オヤジが出入口の扉に掛かった札を『準備中』にして、僕らの前に来た。


 流し場には食器が大量に溜まっている。茅ヶ崎の店のころと同じく食洗機はないようだ。


「良かった良かった! 幼馴染みの味は守られた! チャーシューは仮の味?」


 久里浜さんが指摘した通り、チャーシューは茅ヶ崎の店と比べて少々硬めだった。


「配送範囲の関係で肉の業者を変えなきゃいけなくなってね。値段を据え置いたとはいえ百点の味が完成しないまま店を開けたのは申し訳なかった。早めに前の味に限りなく近づけるようにするよ」


「あの、私、食器洗い手伝います!」


「いやいやいいって、これからも客入り良ければ食洗機買わなきゃね」


「すぐ買いなよ、プレゼントするからさ」


「さすが久里浜さん、お金持ち」


「ちっちゃいときからたくさんオマケしてもらってるからね、その分の恩返しをするときが来たんだよ」


 その後、僕らは手分けをして食器洗い、客席の清掃、トイレ掃除を行うことになった。僕がトイレ掃除をする空気感が強く漂っていた。

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