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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット
291/334

同棲開始、木曜19時は女児向けアニメ

「おかえり」


「ただいま」


 アパートに別れを告げた僕は、居候先の衣笠家に戻った。暖色ダウンライトが灯る玄関、鍵を持っていない僕はインターフォンを押して、未来に出迎えてもらった。やさしく笑む彼女に、僕はときめきと安堵を覚えた。なんだか新婚みたいだ。


 何度か訪れているが、慣れない洋室に腰を下ろす。カバーのかかった白い照明、四角いテーブルによもぎ色の座布団が四つ。32インチのテレビは9チャンネルの女児向けアイドルアニメを映している。きょうは木曜日だ。


 キッチンに立った未来はIHのスイッチを入れ、鍋の味噌汁をおたまでゆっくり掻き回している。


「ごはん、できたよ」


 未来の背に視線を留めた僕に、未来は見返った。


 未来とともに配膳。卓上には白米、葱とわかめと絹ごし豆腐の味噌汁、玉子焼き、美少女キャラクターがプリントされた小袋入りのふりかけ。なんとも日本らしいメニューだ。明日仕事ならもう少しがっつり食べたいが、休みだ。明日の夕飯は僕がメニューを考えて調理しようか。


 向かい合う僕と未来は「いただきます」と手を合わせ、両者味噌汁に手をつけた。一口すすった僕は、右のテレビに目を遣った。未来、成城さん、百合丘さんその他鉄道職員、僕の周りはアニメファンが多く、その影響で女児向けアニメをたまに見ているが、崖登りや、クリスマスツリーをつくるために雪山に入って斧でモミの木を切り倒すなど、なかなかスパルタンな描写が多い。


 僕も高校時代、学校のカリキュラムで禅寺修行をした際に斧で木を切り倒したが、なかなか倒れない。紛れもない拷問だ。幅20センチほどの木で倒すまで2時間かかった。マ○オパーティーのように簡単にはいかない。


 いまテレビでは、アイドルがオフの日に東海道線のようなオレンジと緑の電車で出かけ、熱海に似た地で温泉に浸かっているシーンが流れている。僕も温泉に入りたい。


 しかしこの部屋の風呂はゆったり脚を伸ばせて快適。毎日浸かれば温泉に近い効果を得られるかもしれない。


「ああ、美味しい」


「ほんと?」


「うん、ホッとする」


 未来の味噌汁は、適度な塩加減でまるっこい味がする。


「ふふ、良かった」


 目の前にいるのは恋人だが、馴染まぬ環境に緊張、更にアパートに戻れない寂寞せきばくに胸を支配されている僕は、情緒不安定だ。


 慣れるまで少し時間を要するだろうが、まずは心を落ち着けてゆきたい。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 来週はワクチン接種による発熱が見込まれるため、お休みさせていただきます。

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