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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

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288/334

車掌兼イラストレーター、百合丘花梨2

 運転席に座って、横長の窓から崖下の海原を見下ろす。遠くに大きな島影が見える。いつかの徹夜明けにクソガキと、わたしが乗務員登用されたときには既に引退していたスーパービュー踊り子と185系の踊り子に乗って、この景色を見たっけ。


 早川はやかわ駅に着いて、停止位置を確認してドアを開けた。吹き上がる海風と吹き下ろす箱根の風が交差するのがこの早川。最近知った。駅の周りは海、道路、山。こんな田舎の駅に立つなんて、川崎の住宅地で育ち、横浜の駅で仕事してた都会暮らしのころには想像できなかった。いま住んでる辻堂も特快は止まらないけど、言うほど田舎でもない。


 照りつける日差しに、遠くで鳴く一頭のアブラゼミ。最後部の車両に乗ってきた客はスーツ姿のおっさん一人。都会と比べれば雑音の少ない発車メロディーをワンコーラス鳴らしてドアを閉めた。


 早川を出て2分で小田原駅に到着。これにて乗務完了。


「おはよう花梨ちゃん、そろそろ慣れたかい?」


 小田原駅で待っていたのは、この列車の乗務を引き継ぐ民営化前からのベテラン車掌、金子かねこさん。狭い乗務員室の扉をなんとか通り抜けられるぽっちゃりしたおっさんで、松田さんの同期。松田さんが運転士をしていたころは、何度も同じ列車に乗務したそう。


「おはようございます~、まだまだですよ~」


 わたしは力なく答えた。


「まあぼちぼちね。それじゃあお疲れさん」


「お疲れさまです~」


 発車メロディー『お猿のかごや』が鳴り終わると、金子さんは乗務員室の扉をガチャンと派手に閉めて、窓を開けて顔を車外に半分出した。基本の動作。


 電車が動き出すと金子さんは扉に添えた手を私に向けひらひら振って、やがて電車も見えなくなった。


 あ~終わった。あとは点呼して着替えてツト(『辻堂』の電報略語)までグリーン車で一眠りして帰ろう。


 そういえば、きょうは本牧さんがアパートを退去する日だったな。わたしには関係ないけど、未来ちゃんと同棲は羨ましい。わたしもあの子の頭をワシャワシャして癒されながら眠りたい。


 あ~、ねみ、マジで眠い……。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 来週はお休みさせていただきます。

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