表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

282/334

僕は存在していなかった

 森の香りが漂う、いつもの狭くて温かい風呂。終わりを告げる、いつもの日常。


 僕の余命は残り5年かもしれないが、それ以上生きたら、僕より先に旅立つものと別れる機会が、長生きする分多く訪れる。


 目的の見当たらない人生ならば、むしろ長生きしたほうがつらいのではないか。


 だが、生き長らえるということは、僕に生きる意味があるということだ。別れに伴う痛みも含め、学ぶべきことがあるのだ。逆に、この世での用が済めば明日にでも天に召されるか地獄に堕ちるだろう。


 これだけはいつも肝に銘じている。


 鉄道車両だってそうだ。首都圏など時代が目

まぐるしく変化する地域の車両は製造後10年も経たず廃車となるものもあるが、時の流れが緩やかな地域では半世紀以上活躍している車両もある。


 そしてこの建物は、明日で役目を終える。


「寂しいなあ……」


 思わず、心の声が漏れた。


 ああ、そうか。


 心の声を漏らしたとき、それと引き換えに胸の中へ入ってきたものがあった。


 人情だ。


 思えば僕は、たった今まで空虚な存在だった。否、存在していなかった。


 人々の笑顔があふれる駅を創りたい情熱、愛する人の存在。実現したいものや大切な人はあっても、僕自身は存在していなかった。


 僕は26年も生きていまようやく、この世に降りて来たんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ