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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット
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引っ越し準備

 福島旅行から1ヶ月経ち、僕は部屋の整理をしていた。来月、このアパートは解体される。1ヶ月後、この建物は無くなっている。


 半世紀、悪天候や大震災を含む幾重もの災害に耐え、乱暴な住人の振る舞いにも堪えてきたであろうこのアパートは、ここ大船おおふなの変遷を見守ってきた。周りの建物はみな、これより新しい。


 さて僕はといえば、部屋の物の多さに驚いている。よく床が抜けなかったものだ。僕も乱暴な住人の一人だ。


 特に多いのが書物。漫画の単行本、大学生時代によく買っていた自己啓発本やビジネス書。ほかにハードカバーの小説や哲学書。それにノートや地図帳も。合計百冊以上。


 転居先は、3LDKある衣笠さんの部屋。成り行き的に同棲することとなった。同棲というよりは居候と言ったほうが正しいかもしれない。


 彼女の部屋は広く、ここにある家財すべてを収容できなくもないだろうが、レイアウトや踏み場を鑑みていくらかの整理は必要だ。


 まず照明器具。これは一時的に衣笠さんの部屋(の中の僕に貸し出される部屋)に運び、折を見てメ○カリやジ○ティーのような出品サイトか、リサイクルショップへ売る。


 続いていつの間にか溜まった古い書類は古紙回収の日に出す。書物はいくらか古本店に売り、次に必要としてくれる人が現れることを祈る。


 ああ、ほんとうにここは、無くなってしまうのか。


 実感が湧かない。自分が暮らしてきた建物が無くなってしまう実感が。


 越してきたころは、このようなボロアパート、給料が安いから渋々入っただけで可及的速やかに退居したいと思っていたが、いざ解体となると、哀愁が湧くものだ。


 否応なく訪れた人生の転機。他方、仕事は相変わらず支社勤務、コスト削減のため各現場に圧力をかけるというもの。僕のやりたいこととは大きく乖離している。


 会社を辞めるか、配置転換を求めるか。先は真っ暗かもしれなくて、頭は真っ白だ。

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