福島駅にて
新幹線の改札口を出ると、やや広めに取られた在来線のコンコースが伸びている。奥羽本線や東北本線のりばへ続く階段の横をスルーして、足元の案内表示に従って進み、駅ビルへつながる在来線改札口の直前で左折。目の前にエレベーターが表れた。階段はないようだが、恐らく駅ビルを経由すれば階段もしくはエスカレーターがあるのだろう。
コンコース壁面の窓下には、福島駅に近い観光地のポスターが貼り付けられていて、その中にこれから向かう飯坂温泉もあった。
エレベーターで1階に下り、東北本線の線路を横目に50メートルほど直進して右折。それにしてもこの福島駅、郡山駅と比べて利用客が少なく、静かな駅だ。しかし県庁所在地、街はそれなりに栄えているだろう。
右折してすぐ、ICカードの簡易式改札機の横を通り、福島交通線の切符を買うため一旦改札外へ。切符売り場には、阿武隈急行線のキャラクターパネルが立っている。こちらは飯坂温泉が萌えの街というのとは無関係の女性キャラクターだ。多くの鉄道会社にいる女性社員キャラクターシリーズの一人である。日本総合鉄道では、関西地区を管轄する近畿支社が積極的にキャラクターを活用している。
キャラクターを横目に、福島交通線の切符を購入。ここでは阿武隈急行線と福島交通線の切符を売っているようで、それぞれ異なる鉄道会社であるため買い間違えないよう注意が必要だ。
僕は間違いなく福島交通飯坂線の切符を購入し、いまや珍しい有人改札口の係員に会釈しながら券面を見せた。入鋏はしないようだ。
自販機が並ぶコーナーを横目に乗り場へ。左側が阿武隈急行線、右側が飯坂線乗り場のようだ。ホームの幅は5メートル前後と狭く、見たところ列車編成は最長で3両だろう。そこに所狭しと利用客が集まり、ホーム中央部のベンチには高齢者が数名座っている。
頭上を見上げると、列車の接近を知らせる文字付き電灯が。これまた懐かしい。『はなみずざかゆき』『いいざかおんせんゆき』のいずれかの文字の内側が点灯するようになっている。
線路外の駐車場や、遠くの電波塔のような建造物を眺めながら白線の内側で十数分ほど待っていると、左側から歩くような速さで平べったい顔をした電車が接近し、ブレーキ制動、緩解を繰り返して停車した。東京と神奈川を結ぶ東急電鉄で使用していた車両の中間車両に顔を取り付けたものだと理解した。車内に目を遣ると、懐かしい黄色いロングシートが横たわっている。
僕自身は未踏の地を、かつて利用していた列車で行く。どこか不思議な感覚だ。
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