表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

271/334

磐梯熱海温泉から飯坂温泉へ

 カタン、カタンカタン、カタン。


 電車の通過音で目覚めると、もう7時を過ぎていた。眠ってから起きるまでの数時間はほんとうに一瞬のように感じる。


「あ、おはよう本牧さん」


 むくりと起き上がると、昨夜と変わらず宿の青い浴衣を纏った衣笠さんがいる。右腕に手ぬぐいをかけていて、シャンプーの香りがほのかに漂っている。


「おはよう。朝風呂?」


「うん。本牧さんもいかがです?」


「そうしよう」


 朝食は8時にお願いしている。まだ時間があるので朝風呂といこう。


 手ぬぐいを持って、今朝は昨夜入らなかった五右衛門風呂へ。


 なるほど、3つある浴槽ごとに温度が違うのか。ぬるい浴槽から段階的に入ると、熱い浴槽も入りやすかった。


 風呂を出て、焼き鮭や納豆の朝食をいただき、食べ終えたころにはもう9時を過ぎていた。昨夜も馬刺しや鮎の塩焼き、天ぷらなどいろいろいただいたが、深山荘の食事はほんとうに本格的で美味しかった。


 部屋に戻って荷物をまとめ、一息ついたら出発の時間。


「ワンワン! ワンワン!」


「あ、わんちゃん! わんわん!」


 玄関口の勘定場で宿泊費と深山荘オリジナル、五右衛門風呂に浸かった女の子のアクリルキーホルダーの支払いを済ませると、僕らのもとへ一頭のミニチュアダックスフントが駆け寄ってきた。衣笠さんが頭を撫でると、わんこはその手をぺろぺろした。あ、このわんこ、キーホルダーとか宿泊特典の風呂敷に描かれているわんこだ。


「ロンちゃん、お客さんが帰っちゃうの、寂しいのねぇ」


 と女将さん。


「また来ます。ほんとうに良い時間を過ごさせていただきました」


「私もまた来たいです! ロンちゃんに会って、おいしいごはんを食べて温泉に浸かりたい!」


 別れを惜しみつつ、僕らは女将さんとロンちゃん、そして見送りに出てきたご主人を、幹線道路に出るまでの50メーター、前方に注意しつつ後ろを向きながら歩いた。


「いい宿でしたね!」


 衣笠さんの笑顔が弾けている。


「うん、また来よう。そうだ、この後、どうする? 仙台に寄る?」


「うん、そうしようかな。本牧さんは?」


「僕は、もう一ヶ所、温泉地に行ってみようかな」


 ということで、磐梯熱海駅から磐越西線に乗って郡山駅に出て、僕らはやまびこ号の自由席車両に乗った。僕は通路側D席に、衣笠さんは窓側E席に着席。


 郡山駅を出て15分、福島駅に到着した。


「じゃあ、僕はここで。家族水入らず、ごゆっくり」


「うん、本牧さんも楽しんできて。萌えのワンダーランド」


「萌えのワンダーランド?」


「行けばわかる、行かないとわかんない」


 某不動産会社か?


 僕が向かうのは温泉地。確かに磐梯熱海でもいわゆる萌えキャラクターの展開があり、僕はいまその風呂敷やキーホルダーを所持しているが、あそこは萌えのワンダーランドではなかった。しかし地域の一員として活躍する彼女の姿は凛々しく、同じく郡山市出身の成城さんと似た、クールビューティーな出で立ちは、郡山人の特徴をよく捉えていると思う。


 車外に出て、衣笠さんを見送るために彼女のいる窓の前に立つ。ほどなくして発車の放送が入り、高らかな音楽が流れ始めた。高校野球でおなじみの『栄冠は君に輝く』だ。この曲を作った故、古関こせき裕而ゆうじ氏が地元、福島市出身のためこの曲が採用された。


 電車のドアが閉まり、ゆっくりと走り始めた電車。僕は彼女に手を振って、電車が見えなくなるまで見送った。


 さて、行くとしますか。萌えのワンダーランド、飯坂いいざか温泉。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 来週は都合によりお休みさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ