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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット
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いろんな景色を見てみたい

 ワインをちびちび飲みながら、ほんわかした時間が過ぎてゆく。暖房をかけていても足先は冷えるけれど、心はほんわかぽかぽか。


「彼とはどうなの?」


 小百合さんのおぼろげな視線は、敢えて私の目を捕えず泳いでいる。たぶんそれは、ずっと気にしていたけれど、敢えて今までしてこなかった質問。


「はい、本牧さんが住んでるアパートが7月に取り壊されることになって寂しいとか、彼の好みを鑑みたおすすめのアニメの話なんかをしています」


 この近辺を舞台にした青いブタ野郎とか、仙台を舞台にしたアイドルのアニメは本牧さんも気に入っている。


「あら、幸せそうでいいわね。アパートが取り壊されちゃうのは寂しいけど」


「はい、お家っていうのは、思い出が詰まっていて、誰も味方してくれなくても、その建物だけは自分を受け入れてくれる、そんな場所ですから」


「うん、そうね、建物にも、きっと命はあって、魂が宿っている。私もそう思う。こういう想像ができる未来ちゃんは、幸せになるべきよね」


 それは、小百合さんには幸せになる資格がないとも取れる、どこか淋しげな言い回しだった。


「小百合さんにも、来るべきときが来たら、素敵な人が現れて、幸せになれると思います」


 って、彼氏がいる私が言っても嫌味に聞こえるだけかもしれないけど。


「ありがとう。私もね、実はそんな気がしているの」


 そうか。自分にとっての最高の幸福が訪れるのか、不安はあるけれど、小百合さんは、未来を諦めていない。いつかはわからないけれど、幸せを掴める日が来る。そう信じているんだ。


「素敵な人と巡り会って、今の仕事に囚われないで、いろんな景色を見てみたい。それが夢なの」


「おお、いいですね! 今の仕事に囚われないでっていう人、最近多いですよね」


 本牧さんも、花梨ちゃんも、成城なるしろさん改め松田さんも、世間を俯瞰してみても。


「昔は、会社とか、組織を通して自己実現を図る人が多かったけど、それもありだし、そうじゃないのもあり。法に触れることとか、良識を欠いたことじゃなければなんでもありなのよ」


「なるほど、私もいろんな景色を見たいけど、今は小百合さんの背中を追いかけて一流のブライダルプランナーになりたくて」


「ふふふ、私が一流かどうかはさておき、いろんな人と触れて、幸せを彩るこのお仕事はきっと、将来どんなことをするにしても役立つと思うわ」


 これから歩んでゆく未来には、一体どんなことが待ち受けていて、どんな可能性を秘めているのか。


 今の私は一流のブライダルプランナーになるのが夢であり目標だけれど、人生、それだけでいいのかなという感じもする。


 私は、一流のブライダルプランナーになりたいとは思うけれど、店長になったり偉くなったり、そういうキャリア形成には興味がない。こういう考え方は会社にとってはきっとマイナスで、よもやリストラの対象になりかねない。


 リストラされたとして、私はまた、別の企業でブライダルプランナーを続けたいと思うだろうか。そこがブラック企業で、何時間も残業があって、人間関係も良くなくて、客層も良くなくて、彼らを幸せにしたいと思えない、そんなことばかりだとしたら……。


 実際、今の会社でもあまり幸せにしたいと思えないクソ客は来るし。でも、小百合さんや朝比奈店長がいるからなんとか頑張れているわけで。


 そう考えると、人生迷うなぁ。私も、いろんな景色を見てみたい。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 都合により、来週はお休みさせていただきます。

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