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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

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253/334

ヨコハマヨコスカ

 とんかつ屋さんを出た私と小百合さんは、横須賀中央駅前からどぶ板通りを通って波止場に沿ったヴェルニー公園の遊歩道を横須賀駅に向かって歩いている。


 夕焼け空の波止場に波がちゃぷちゃぷと打ち寄せ、数百メートル右前方には、甲板から見下ろせば私たち人間など豆粒くらいにしか見えないであろう大きな艦艇が停泊している。ということはこの海、それなりの深さがあるのだろう。


「一口に海といっても、色々な景色があるものね」


 小百合さんが艦艇や海を見回して言った。


「はい、港のヨコハマヨコスカも違うし、湘南も伊豆も東北も海岸も」


「あら、未来ちゃん、ずいぶん年季の入ったネタを知ってるのね」


「じいちゃんばあちゃんとテレビ見てればいくらか覚えますよ!」


「そうかぁ、私も、一人でもあまりテレビとか、俗世のことに触れてこなかったからなぁ。ヨコハマヨコスカは知ってるけど」


「小百合さん、青春はこれからですよ! 大人の青春倶楽部です!」


「大人の青春倶楽部? ふふ、電車賃でも安くなるのかしら?」


「電車賃は、えーと、青春18きっぷなら何歳になっても青春価格ですよ!」


「電車の旅もいいわね。私、最近ほんとうに遊びたくて仕方ないの。学生時代に青春らしい青春を過ごしてこなかったから、その反動ね」


 乾いた海風を浴びても、小百合さんの表情は穏やか。釣られて私も、心穏やかになる。オレンジの街頭がほんのり照らす、横須賀の薄暮時。


「青春は、いくつになっても訪れますよ。色んな経験をしてきた分、平均的な人には味わえない幸せが、きっと来るはずです。来る、きっと来る!」


「ふふふ、来る、きっと来るなんて言われたら、どうしてか不吉な予感がするわ」


「そうですか? さだ……じゃなくて幸子さちこさんが来ますよ?」


「ふふふふふ、未来ちゃん、確信犯ね」


 ほんの数秒前まで穏やかだった小百合さんの笑みは、今もそれを保っているけれど、なぜかこう、どこか穏やかじゃないものを感じた。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 都合により、次回の更新は5月16日(日)を予定しております。

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