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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

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お嬢様の反動

「うーん! やさしくてホッとする味」


 観音崎を出た私と小百合さんは、食事をするため横須賀中央駅でバスを途中下車。近くの地下にあるトンカツ屋さんに入った。


 さて、小百合さんが家庭的でホッとすると言った料理はなんでしょう?


 ちなみに私は今、明太チーズカツを食べています。キャベツ、ご飯、味噌汁付き。


「これが日本の家庭の味ですよ、小百合さん」


「ああ、そうなのね、私のうちではもう少し辛口で、ジャガイモやニンジンは入っていないから」


「それはそれで三浦家の家庭の味です!」


 そう、小百合お嬢様がお召し上がりになられているのは、横須賀海軍カレー。ミルクとサラダがセットになっている。


 横須賀海軍カレーは、ジャガイモ、ニンジン牛肉または豚肉を煮込んだいわゆる日本の家庭的なカレー。海上自衛隊では曜日感覚を損なわぬよう毎週金曜日をカレーの日として定めているのだとか。


 曜日感覚を失っていた隊員がカレーを提供されると、あ、きょうは金曜日か。となるという理屈。


「唐揚げ、フライドポテト、レモンハイ、梅干しサワー、ラーメン、やきそば、そしてカレー。世の中には美味しいものがたくさんあるというのに、学生時代の私はそれを知らずに過ごしていたなんて、人生損した気分だわ」


 そう語る小百合さんはほっぺを落として、心の底から幸せそう。


「小百合さんは、フォアグラとか食べて育ったんですか?」


「フォアグラはあまり食べたことないわね。カレーとかシチューみたいな家庭料理を食べて育っていたつもりでいたけれど、ジャガイモが入っていなかったり、白いシチューではなくてビーフシチューだったり、ちょっと違うものを食べて育ったの」


「ラーメンとかやきそばは?」


「ラーメンは、たまにサンマーメンを食べたくらいで、ほとんど食べてなかったわ。やきそばは、やきそばとは名ばかりの、細いかた焼きそばに餡をかけた餡かけやきそば」


「ソースやきそばとか塩やきそばは食べてこなかったんですね」


「そうなの。平塚の七夕祭りに一人で出かけて初めて食べた出店のソースやきそばには感動したわ。後からカップの塩やきそばも食べたのだけれど、湯切りのとき、なるべくお湯を残さないように根気よくやるのが醍醐味ね」


「うんうん、あと、キャベツをこぼさないように気をつけるのもまた」


「そうね、細かく千切れた麺もこぼさないようにしているわ」


 小百合さんがどんどん庶民の道へ逸れてゆく。そのさまを、私は笑顔で見守る。

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