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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

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出張さいたま新都心

「ふわぁ~、眠い、帰りたい……」


 起きた途端に「帰りたい」と言う、学生時代から抜けない口癖。私はきょうも変わらず大船の賃貸マンションでひとり、朝を迎えた。


 といっても6時の空はまだ暗く、日の出まではもう少しかかる。身支度をしていればいつの間にか陽が昇っている。それが冬の日常。


 大船駅からいつも通り7時半の電車に乗った。職場の最寄駅に着いても本牧さんや他の駅員さんの姿はなく、ホームには自動放送だけが流れていた。


 今朝で本牧さん、花梨ちゃん、成城(旧姓)さんの駅業務は最後。相手は仕事中だから話しかけるのは気が引けるけど、遠くからその姿を見たかった気持ちはある。


 職場に着くと、さっそく出張の準備。きょうはちょっと遠い埼玉まで、子安さんと二人で。


「埼玉かあ、ちょっと遠いけど気分転換にはいいね!」


 駅に向かう途中のオフィス街で私は子安さんが言った。


「そうですね、気分転換にはちょうどいいかもですね」


 私は子安さんが苦手だから、今回の出張はなかなか憂鬱。小百合さんといっしょが良かった。


 横浜駅で京浜東北線から上野東京ラインに乗り換え。時間に余裕を持って出たから、乗り換え予定の電車まで10分くらいある。


『7番線ドアが閉まります』


 上野東京ラインのホームに上がると、乗る予定より前の電車が停車中で、まもなく発車するところだった。


「あ、電車だ! 乗っちゃお!」


「えっ!?」


 またこのパターン!?


 子安さんが電車に駆け込み、車内とホームに跨がって私を誘導した。


『駆け込み乗車はおやめください!』


 駅員さんが怒ってる! 私も怒ってる!


「ほら、早く早くう!」


 うっざっ! クソうざいコイツ!


 イライラしながらも「降りろこのクソ野郎!」とは言えず、私は渋々電車に乗った。


「ほらほら、ここ空いてるよ!」


 子安さんが先に着席し、ポンポンと隣の空いている席に私を誘った。


「私は立ってます」


 ただでさえ駆け込み乗車をして周囲の視線が痛い。迷惑をかけておいて図々しく座るなんて私にはできない。


『この電車は、上野東京ライン、上野うえの行きです』


 自動放送が流れた。上野行きじゃ出張先のさいたま新都心まで行かないじゃん。次の電車に乗っても同じじゃん。


 二ヶ国語の自動放送が流れると、今度は車掌さんの肉声放送が。


『お客さまにお願いいたします。駆け込み乗車は思わぬ怪我につながるほか、列車が遅れる原因となりますのでおやめください』


 はい、本当に申し訳ございません。次からはキッパリ拒否したいな、駆け込み乗車その他迷惑行為。


 悶々とした気持ちを圧し殺し、埼玉の小ぢんまりとした式場でスタッフのみによる挙式打ち合わせをして、そこで高級フランス料理のコースを式場側の厚意でいただき(とても美味しかった。お金があればプライベートで食べたいくらい)、ようやく横浜に戻る時間となった。


 周囲にぽつぽつと中高層ビルが建つさいたま新都心駅のコンコースを歩いていると、子安さんのスマートフォンに着信があった。マナーモードにしておけこのクソ野郎。


「ん? オヤジからだ。ちょっと出ていい?」


「はい」


 私は淡白に返事をして、その場で立ち止まった。吹き抜けのコンコースには横浜より乾いた冷たい風が突き刺してくる。東北のしっとりした寒さより肌と精神的ダメージが大きい。


「え、マジで!? わかった!」


 何かあったのか、子安さんはあからさまに焦っている。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 来週は都合によりお休みさせていただきます。お楽しみにしていただいている皆さまには大変恐れ入りますが、何卒次回をお待ちいただけますようお願い申し上げます。

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