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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

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はじめての伊豆旅行

 1日休んだ翌日、気分転換にどこかへ旅に出ようと思い立って、衣笠さんが行ってみたいと行っていた伊豆へ出かけることにした。大船からは日帰りでも手軽に行ける距離だ。


 僕も衣笠さんも仕事はシフト制だが、休日が重なって良かった。


 行き詰まったら気分転換をすると良いのは仙台で実感したが、こうしてまた極限まで行ってようやくの旅行だ。


 10時半過ぎ、大船駅の東海道線ホームで座席指定券を買った列車を待っていると、5分後に伊豆へ向かう特急踊り子号が入ってきた。


「おお、青い踊り子号」


 衣笠さんが列車を見て言った。踊り子号には白地に緑の斜線が引かれた古い車両(1980年代製造)185系と、車体とほとんどがマリンブルーに塗装された中古車両(2000年代製造)257系がある。もうじき185系は姿を消し、257系に統一される予定。


 通常なら新車を入れるところだが、他線区で257系、351系と混在していた車種をすべて新型の353系に置き換え統一、また、ある線区では減便に伴い余剰となった257系を順次踊り子号用に改造したうえで配備する。これにより、前者の線区と踊り子号は車種統一、後者の線区は余剰車両が撤退し、経営を合理化する。なお、前者線区の351系は老朽化により廃車となった。


「僕も初めて乗るなあ」


「私は踊り子自体初めて乗るけど、青いのはあんまり見かけないレア感がある」


 最近、衣笠さんは徐々に僕に対しての敬語を解いている。距離が縮まってきている感じがして、素直にうれしい。こういうのを、ほっこりというのだろうか。彼女といると、未体験の感情が沸々と沸き上がる。


 車内に入って、車両中央部、海側の席に座った。シートの色もマリンブルーだ。この辺りや伊豆の景色を見慣れている僕は通路側。


 平日だからか利用者は少ないが、前方ではおばさん団体、後方では子連れがわいわいしている。


 まもなく列車は走り出し、速度が乗ってきた。車内チャイムと2か国語の自動案内放送が流れ、旅情を掻き立てる。


「特急電車の旅、私好きかも」


「ん?」


 僕もその気持ちはわかるが、敢えて続きを促した。


「なんだかこう、ティントンタントーンって流れるチャイムとか、座席の感じとか、伊豆なら普通の電車でも行けない距離じゃないけど、旅情を掻き立てる感じがして」


「同感。僕もいま、そう思ってたところなんだ」


「ふふふ、だよねだよねっ」


 茅ヶ崎駅を通過してしばらくまでは住宅地が続き、宇宙からも見える一級河川の相模川の鉄橋に差し掛かると、河口の先に海が見える。それからしばらくは住宅地や里山風景の合間から数百メートル先に海が見え隠れ。


 小田原駅の次、早川駅を通過すると列車は徐々に海沿い山間部に入り、斜面に引かれた線路の上から大海原を見下ろせる。


 衣笠さんにとってはそれが珍しいようで、車窓をまじまじと眺めていた。


 そうか、この辺りの景色は僕にとっては大した気分転換にはならないが、衣笠さんにとっては珍しい眺め。逆に衣笠さんにとっての仙台は見慣れた心落ち着く故郷だが、僕にとっては心洗われる旅先。


 さて、これから行く伊豆は僕にとってもあまり馴染みのない場所。この後、どんな旅が待っているだろう。そう思うと、少し心が躍った。

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