おはよう
久しぶりに、心地良い夢を見ている。
彼女といっしょの布団で溶けるように眠り、いつの間にか抱き枕にしていた。その抱き心地がやわらかく、感触と香りが良い眠りを誘った。
彼女の背に顔をつけて眠ったふりをしているが、いつ手放そう。とても心地良くて放したくない。
いま何時だろう。もう陽は昇っているようだから、7時は過ぎている。この季節、この辺りの日の出は6時50分ころ。
ああ、また意識が遠退いてきた。朝の光を微かに浴びて、きょうは二度寝だ。
◇◇◇
んんんんんん(語彙力)!!
抱きつかれてる! 抱きつかれてる! 抱き枕にされてる!
前にもこういうことはあったけど、慣れないなあ。
外が明るくなる前から抱きつかれてるから、もう1時間くらい経ってる!
そわそわドキドキして落ち着かないけど、本牧さんには癒しが必要! 私なんぞで癒されるなら好きなだけ抱き枕にしてください!
うーん、でも、あれだなあ、アレだよアレ(抱きつかれたままだけどだんだん余裕が出てきた)。付き合い始めたら甘い日々が始まると思っていたけれど、本牧さんは過労や気の遣い過ぎで神経が衰弱しているから、まずは心を癒してもらって、ほかにも病気とかがあるなら治して、健康になってもらわなくちゃ。
線路に落ちたときは私が命を救ってもらったし、こんどは私が助ける番。
きょうは私も本牧さんも休みだから、のんびりした一日を過ごしたいな。
おっと。
本牧さんの腕が私から離れた。彼は仰向けになって寝息を立てている。
うん、前よりは寝顔が穏やかだ。
自ずと彼に微笑んだ。
「ん、んんん……」
彼の瞼がぴくぴく動いて、眼をこすった。
「おはよう、本牧さん」
目を覚ました彼に、私はにっこり笑んだ。




