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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
迫るタイムリミット

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明日のことは明日考えよう

「ふわああああああ! 終わったー」


 一大プロジェクトを無事に終え、気恥ずかしさとともにブーケを持ったまま帰宅。真っ暗な玄関の錠を閉めると、全身の力が一気に抜けた。虚無、脱力、達成感、手に持つブーケの未来への希望。未来という私の名の通り、幸せな未来を開きたい。


 今日まではブライダルトレインの絡みで多忙な日々を送ってきた私だけれど、今後はそんなに忙しくなりそうな予定はない。


 明日からは一週間の慰労休暇。その間、特に予定はない。


 とりあえず、この多忙な日々を共に闘ってくれたスーツたちをクリーニングに出して、あとは散歩やお茶をするなどしてのんびり過ごすつもり。仙台に帰ろうとも思ったけれど、それだと忙しなくなりそうだからやめた。


 寝室でスーツを脱ぎ、ハンガーに掛けてクローゼットにしまった。ワイシャツと下着姿で手洗いうがいをし、そのまま風呂掃除。バスタブに湯を張っている間に化粧落としと洗髪、ヘアケアを済ませた。一度浴室から離脱すると、もう面倒で戻りたくなくなってしまう。


 横浜羽沢駅から直帰した私と小百合さんに対し、久里浜さんと松田さんは電車の回送、本牧さんは駅に戻って制服から私服に着替えるなど残務があるから、恐らくまだ帰宅できていない。


 こちらから投げた仕事なのに自分たちは先に帰宅して、なんだか申し訳ない。会社が違うから手は出せないのだけれども。彼らも同じく明日からしばらく休暇なのが救い。


『早く告らないと、本牧さんと会えなくなっちゃうよ』


 ふと、花梨ちゃんからの警告を思い出した。おととい、ラインしていたときのこと。


 日本総合鉄道では何年も前から現場業務の外注化推進に伴う大規模な人事異動が進められていて、その波がとうとう横浜地区にも押し寄せてきた。花梨ちゃんは車掌に、本牧さんや成城さんは支社や本社などの非現業職場へ転勤になる可能性が高いとのこと。


 そうなると、私と本牧さんとの接点が、場を設けない限りはなくなる。花梨ちゃんと本牧さんが会って、いろいろと垂れ込んでくれる機会もなくなる。


 そもそもブライダルトレイン挙式も終わって、明日から会う機会が激減するというのに。


 本牧さんともライン交換はしているから、呼べば会えないこともないけれど……。


 ブクブクブクブク。


 湯の貯まったバスタブに白い保湿入浴剤を入れ、脚を伸ばして口まで浸かり、子どもみたいに泡を噴いた。


 そろそろ、想いを伝えなきゃいけないな。向こうから告白してくれたらなんて都合の良いことを考えたりもしたけれど、本牧さんはきっと引く手数多。成城さんや小百合さんにも気に入られている。ということは、鉄道会社の他の女性社員や、外部の友人にも好かれている可能性は大いにある。小百合さんは手を出さないでいてくれているけれど、それに甘えちゃいけない。彼女だって一人の女。好意がふくらんで感情を押さえ切れなくなったら、あっさりさらってゆくかもしれない。小百合さんには幸せになってほしいけど……。


 そんなことを考えているうちに火照って、いつの間にか気絶していた。いつものこと。


 すっかり冷めた湯から上がり、からだを洗って浴室を出た。


 とりあえず、きょうは眠ろう。明日のことは、明日考えよう。

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