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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
ブライダルトレイン

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212/334

復活のスカイブルー

「おおおおおお!! すごい!! 外装は試運転してるのを見てたけど、内装まで再現されているとは!!」


「すごいの? これすごいの?」


 タキシード姿のちょいぽちゃ新郎、越後屋えちごや慎太しんたさんと、ウエディングドレス姿の見た目中学生くらいなミニマム新婦、ゆきちゃん。内装まで見事昭和時代のさまに復元された車内に興奮する慎太さんに対し、雪ちゃんはよくわかっていない様子。


「すごいんですよ! 鉄道会社の皆さんが頑張ってくれました!」


「ありがとう!! ありがとう未来ちゃん!! 鉄道員の皆さん!!」


 慎太さんは私の両手をガシッと握り、上下にブンブン振った。もげる、手がもげる!


「あ、はい! ど、どどど、どういたしまして!」


 ドドドドドドドドドッドーって感じで手を振られ、頭がクラクラしてきた。うああ、目眩がする……。


「ぷっはーっ! そうそうこの香り! このコンプレッサー音! ハァ、ハァ、ハァ、ああんもう昇天しちゃう!」


 慎太さんは車内に漂う古い電車独特のにおいと、床下で震えるコンプレッサーの音に全身を刺激され昇天寸前。


「はーあ、良かったぁ」


「どうしたの、未来ちゃん」


 と、肩の力が抜けて項垂れる私の横に、雪ちゃんが心配そうに寄ってきた。私と雪ちゃんはすっかりオタク友だち。慎太さんは車内を舐め回すように見ている。瞳孔が開き息を荒げ、どうにかなってしまっている。


「喜んでくれて、良かったぁ」


 肩の力を抜いたのも束の間、新郎新婦の親族や友人が続々と電車に乗り込み、車内はほぼ満席に。あまり窮屈だと快適性を損ねるので、車両中央部の7人席は4人、端部の3人席は2人に座ってもらうよう調整した。


 通路に設置した簡易テーブルには振動対策として陶器ではなくアルミや紙皿、紙コップが置かれ、料理はフライドポテト、サラダ、唐揚げといったリーズナブルなものにした。慎太さんと雪さんいわく、そのほうが高級料理よりも自分たちらしいからとのこと。わかりみが深い。


『復活のスカイブルー、103系ブライダルトレインにご乗車の皆さま、こんにちはー!』


 わいわいがやがやした車内に、乗務員室から久里浜さんのアナウンスが入った。マイクロホンを手に取ったときに出るぱふっという音もあった。


 こーんにちはー!!


 久里浜さんとゲストのコール&レスポンス。慎太さん側には鉄道ファンの友人が多く、オタク独特の異様な盛り上がりを見せている。


『おおお!! 元気ですねー! わたくし本日、ブライダルトレインは2度目の乗務となります、大船運輸区の久里浜と申します。本日はよろしくお願いいたします! ちなみに前回乗務したブライダルトレインは485系A2編成でした!』


 うお、お、うおおおおおおおおおおおおお!!


 コンプレッサー音を掻き消す慎太さん側ゲストの雄叫び。


 ななな、何!? この異様な感じ!? 雪さん側のゲストがドン引きしてる!


「いまはなき仙台の特急型電車です」


 と、いつの間にか背後にいた本牧さんが耳打ちしてくれた。


「あ、ああ、あれですね、赤とクリーム色の」


「そうです。あれも人気だったんですよ」


 知ってる知ってる。ときどき見た。仙台駅で鉄道ファンがたかってるのも見た。たまに青とクリーム色のもいた。


『ということで、本日乗務させていただきますのは、日本総合鉄道のわたくし久里浜、松田、本牧、ブライダルサービスのルゥルーコーポレーションより、三浦、衣笠で担当させていただきます。ところにより他の担当者が出入りする場合もございますので、ご承知のほどお願い申し上げます! それではまもなく発車となります! ご乗車になりましてお待ちください!』


 ピンポンパンポーン、ピンポンパンポーン。こちら輸送指令。などと、久里浜さんのアナウンスの背後から声が聞こえてくる。博物館に展示されている電車では味わえない、営業列車ならではの音。


『業務放送、本牧社員、衣笠さん、三浦さん、1号車乗務員室にお集まりください』


 衣笠さんのアナウンスに、本牧さんの表情が曇った。あ、これたぶんアレだ。イヤな予感はだいたい当たる。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 先週は休載してしまい申し訳ございません。

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