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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
おねショタ旅行

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中学生男子の妄想

「覗くなよ」


「覗かねえよ」


 海からうねうねした狭い坂道を上がったところにぽつんとあった日帰り温泉。昔はこんな感じの風呂屋が全国各地にあったんだと思う。いかにも昭和の民宿みたいな建物。


 暖簾のれんのかかった脱衣所の前で俺と花梨は別れ、各々アルミサッシの曇りガラスの扉を押し開けた。


 中には1回百円の有料コインロッカーがある。そこらの健康ランドより小さめだ。バカな俺は財布をロッカーに入れる前に閉めてしまい、鍵を開けて財布をしまったので2百円使った。


 クソ、花梨にたかったばちが当たったか?


 それよりだ、タオルで隠してるけどアソコがヤバイ。周りの爺さんたちにバレたら何言われるか。


 いまこのタイミングで、花梨が服と下着を脱いでいる。


 アイツ、どんなブラつけてるんだ? 白? ピンク? 黒? 紫? パンツと上下揃ってのか?


 小6の修学旅行で日光にっこうの温泉に入ったときは同級生の裸なんてどうでも良かったし、いまでも同級生のなんかそんなに興味ないけど、花梨は違う。


 だって、スタイル良すぎだろ!!


 おっぱいどんくらいあんのか知らんけど、足がめっちゃスラっとしてる!!


 顔だって可愛いと美人の間くらいだし、性格は悪いけど、性根は悪いヤツじゃない。


 あんなのが彼女だったら最高すぎる!!


 けど中坊の俺なんて、相手にされないんだろうな。


 そう思ったらしぼんできた。


 よし、風呂入るか。


 カラカラカラ。これまたアルミサッシの薄いガラスが張られた引き戸を開けると、湯気がもわっと全身に覆いかぶさった。


 左に3つシャワーがある。どれも空いていたから、いちばん手前のを使って下半身を洗い、上半身も手で擦って軽く流した。


 あ~あったけ~。


 雨が降っても安心な東屋あずまや付きの露天風呂。ごつごつした岩風呂に、サルみたいに真っ赤になった爺さんが三人。


 俺、めっちゃ浮いてるじゃん。身をほぐす場所なのに、なんか緊張するわ。


 いまごろ花梨も婆さんの中で浮いてんのかな。



 ◇◇◇



 あ~いいお湯。44℃くらいあるかな。屋根があるから雨が降っても安心。


 旅館に泊まるお金はないけど、日帰り温泉なら行けるな。


 ど真ん中にお婆さんの二人組が浸かっていたので、私は距離を取って端に入った。


 硫黄いおうのにおいと、ほのかなヒノキの香り。沸き立つ湯気、湿気を帯びた木の柱。


 見上げた空は横浜より狭いけど、囲っているのは東屋、石垣、草木。


 手のひらで湯を掬って、肩にかける。思いっきり脚を伸ばして、ついでに両手も上へぐーんと伸ばす。いつもは画面が眩しいデスクで気休めにやっているこの動作も、温泉に浸かりながらやると効果覿面こうかてきめん


 これが金持ちの道楽か。また来れるようにお絵描き頑張って、もっと稼ごう。


「私ね、この前、19歳のお兄ちゃんと寝たのよ」


「あんた目ん玉大丈夫? 91歳の間違いじゃないの?」


「それがほんとに19なのよ。身分証見せてもらったんだけどね、それがもう、○大のエリートさんでね、親に勉強しろ勉強しろってうるさく言われて、ヤケになって夜の街を彷徨ってたらうちの店に入ってきたってわけ」


「そんで引っ掛けたの?」


「そうそう、勉強なんてほどほどでいいのよ、私だってこうしてスナックやって75まで生きてきたんだからなんとかなるって言ったらね、ぼろぼろ泣き出しちゃって。それでお店閉めた後に朝までノンストップマラソンよ。ああんどうしましょ、この年で赤ん坊なんてできちゃったら」


「あらあらいいじゃないの。子育てなんてもう何年前の話かしら。あ、還暦になる息子がまだ独立してないわ。仕事もしないで毎日競馬三昧。アタシも85だけど、種馬見つけて息子の弟か妹つくってあげようかしら」


 婆さん、さらっと闇深いこと言ったな。いろんな意味でディープインパクトだわ。


「そうよ、まだまだイケるわよ! そういえば私、最近生理きてないわ」


「あれまぁ、どのくらい?」


「四半世紀くらい!」


「「わーはっはっはっ! あーはっはっはっ!」」


 こいつらのせいで風情の欠片もねぇな。しかも寝た男、私と同い年じゃんか。ガリ勉エリートが婆さん相手とはいえ童貞卒業できたのに、そこそこ遊んでる私はまだ処女とか、なんだか悔しいな。だからといって爺さんとやる気にはならんけど。


 あぁ、私も恋愛したいな。


 でも手ごろな相手がいないんだよな。


 本牧さんは未来ちゃんまっしぐらだし、私とは性格が合わない。


 松田さんとかオジサマたちはもはや意味わからん。酒飲んで野球とかゴルフをテレビ観戦して、朝は新聞を広げる。


 年の差カップルも最近じゃ普通だけど、これはもう性格の不一致とかそういうレベルじゃない。ある意味異世界の生物だわ。


 じゃあ逆に、年下は……。


 いやいや、私から見た年下って、それもう犯罪でしょ。


 純一は私の胸とか脚とかチラ見してくるし、襲えば食えないこともないのだろうけど。


 そこで、いまは某若手イケメン俳優を食いたいとかなんとかで盛り上がっている婆さんの話がリフレインする。


 いやいやいやいや、19歳の男子なら合法だけど、14歳のガキはアウトじゃん。


 ないない。これはマジでアカンやつや。

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