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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
おねショタ旅行
195/334

熱海駅

「マジかよもう着いたのかよ!」


「お前が寝てる間にな」


 電車が熱海駅に入線したところで、私はぐったり眠っていた純一を揺り起こした。


「俺は寝てないぞ! 電車がワープしたんだ!」


「はいはい厨二乙」


「うるせー!」


「いいから降りるぞ」


 言いながら、私は豪華列車の旅の終わりが、少し名残惜しかった。後ろ髪を引かれる思いというやつか。


 降り立った熱海駅のホームは同じ列車から降り立った人や、同じホームの向かい側から発車する沼津ぬまづ方面へ向かう普通列車を待つ人で混み合っている。アンダーパスへ続く細い階段は人が渋滞し、しばらくは駅の外に出れそうにない。私と純一もその列に並んで下った。


 パッと見、熱海駅はホームが在来線のホームが3つ、5番線まであり、見上げると山がある。山の斜面を切り崩したところには新幹線のホームがある、やや大きな駅。


 アンダーパスに下りて、右側の出口へ、人の流れに合わせてゆっくり進む。コンクリートの壁にクリーム色の塗料を塗った、昔ながらの駅。そういえば、昔は小田原駅もこんな感じだったような。


 今日日きょうび、大きな駅といえばカフェやスイーツショップ、ジュースバー、ラーメン屋やうどん屋、本屋なんかもあったりと、おしゃれ感が漂うのが普通。けどこの熱海駅は、あくまでも列車の乗降を目的とした、シンプルな駅。


 と思いきや、改札口を出たらすぐ右側にきれいな駅ビルがあった。なるほど、駅構内には開発の余地がないから外につくったのかと、一丁前に駅員らしいことを考えた。


「で、どこ行くの?」


 駅ビルの脇から周囲を見渡すと、概ね3方位へ歩ける。バスとタクシーもある。私は熱海をよく知らないし、どこか行きたいところがあるのだろうと、純一に訊ねた。


「さあ」


「あ? お前、目的地があって熱海来たんじゃねぇかよ」


「熱海が目的地だ。ていうか花梨、お前、鉄道会社の社員なのに観光地も知らねぇのかよ」


「知ってるよ! 目的地があると思って訊いたんだろ」


 本当は知らないけど。


「じゃあおすすめスポット行こうぜ」


「あぁはいはいわかりました! このプロフェッショナル花梨さまがお客さまをとっておきのスポットへお連れしますよ!」


 ていうかお前、私に交通費払わせたろ。お客さまじゃないじゃん。顔面に唾吐いたろかこのクソガキ。そんな想いで吐き捨てた。


 さて、どうしようか。熱海は本当に知らんぞ。知ってるところといえば基本は横浜と川崎。湘南も多少はかじってる。だが熱海は知らん。とりあえず、右側の商店街に行ってみるか。

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