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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
はじめてのウエディングプランニング
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オタクカップルとオタクプランナー

 あぁ、どうしよう。さっそく会話に詰まりそう。いつもスラスラと話題を引き出す先輩たちはやっぱりすごい。私なんか開始1分で右往左往しているというのに。


「月並みかもしれませんが、アニメといえば、昨夜テレビでやっていた映画、ご覧になりました?」


 しかしコミュ力のない私も今は仕事中。ずっと黙っているわけにはゆかず、会話を繋ぐため、私は昨夜放映されたアニメ映画を話題に上げ、新郎新婦の反応を窺う。どうしよう、こんなの誰でも見てるアニメだねとか、逆に、あぁ、そういう趣味じゃないんだよなとか言われたら。一概にアニメファンといえど好みの幅は広く、ロボットモノ、美少女モノ、日常モノ、アイドルモノなど、趣味が合致しないと会話を続けにくい。


「な、なんとッ! プランナーさんもご覧になっていたのですか!! あれこそ正に神アニメ!! 僕たちも大好きなんですよお!!」


「はい! ときに厳しさはあっても、絆と優しさをメインに描かれていて、公開されたときからずっと大好きなんです!」


「そうそうそこです!! そこなんですよねあの作品の魅力は!! 厳しいおばあさんだけど、一族一人ひとりのことを誰よりも想っていて!! あぁ、私もあんな素敵な家族、憧れちゃうなぁ」


「私も! 私も凄く憧れますぅ!」


「ははは! 僕らもあのような家族を築こうじゃないか!! しかしプランナーさん分かってらっしゃる!! そうなんですよ!! 今じゃなかなか無い愛があの作品にはギュッと詰まってる!!」


 祈りのポーズで両手を組み、自ら話題を振ったアニメについて瞳を輝かせながら力説する私と、それに賛同する新郎新婦。アニメファンが3人集まった店内の一角は、何やら奇妙で濃いオーラを発していた。


 それからしばらくアニメについて語り合ったけれど、キリの良いところで本題のウエディングプランについての話題を切り替えた。


「あーはいはい! 電車での結婚式ってだけでは漠然とし過ぎていると思って、資料を持参しました」


 と、新郎から式場として使用したい車種について記された一枚紙の資料を渡された。私は資料にさっと目を通す。


「あ、この電車知ってます! ちっちゃいときによく見かけましたけど、今でも走ってるんですか?」


 率直な疑問だった。資料によると、お客さまがご所望の車種は1960年代に運行が始まった、昭和時代を代表する通勤型電車とのこと。車体はウグイス色、カナリヤ色、スカイブルーなど、基本的には路線に合わせ車体が単一色で塗装されている。かつて私の地元でも走っていて、幼い頃は時々母とそれに乗って出かけていた。しかし現在は銀色の車体に青や赤、黄緑などの帯を貼った電車がメインで、もう無くなってしまったものだと思っていた。


「あぁ、えぇと、走ってるには走ってるんですけれども、この辺りではもう全滅していて、でもまだ残っている地方もあるので、なんとか走らせてもらえないかなと。当然お金は払います! 自分で言うのもなんですが、そこそこ稼いでいるのでいくら掛かっても構いません!」


 新婦さんは苦笑していて、別に電車で挙式しなくても良いといった雰囲気。対して新郎さんの熱意は凄いのなんの! 初担当でとても大変なお仕事をお願いされちゃった気がするけど、これは頑張るしかない!


「わかりました! なんとかします!」


「お願いします!!」


 熱意に圧された未来は自らの手で新郎の大きな手をギュッと握りしめ、私がんばる! がんばるよと、熱意に応じる姿勢を目で訴えた。


 と、安請け合いをしてしまったけれど、大丈夫かな、電車、ほんとうに調達できるかな? うああああああ! そう思うと胸がざわざわして血の気が引いてきた……。

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