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たしゅけて小百合ママー!

 朝になってしまった……。


 まさか私なんぞに手出しなどしないと思うけど、部屋に男の人がいる事実が眠りの妨げとなり、結局1時間しか眠れなかった。


 事実、特に着衣の乱れはない。子安さん、まだ玄関に転がって眠ってるのかな。


 仕事行きたくない。


 もう休みたい。


 鬱々としながら目を擦って寝室を出ると、子安さんはリビングの床に転がっていた。


「おはようございます」


 私は力なく挨拶した。


「お、おう、おはよう未来ちゃん。ここ、未来ちゃんの家なんだね。広くてビビったわ~」


 寝転がっていた子安さんは私の声に驚いたのか、ビクッとして瞬時にからだを起こし、部屋の感想を述べた。髪はボサボサ、スーツはくたびれている。


「3LDKあるんですよ。田舎の家族とか、友だちが寝泊まりできるように広めのお部屋を借りたんです」


「そっか、さすが未来ちゃん! 気が利くね!」


「い、いえ、よく考えたらこんなに広い部屋、所帯持ちとか、もっと他に必要としている人がいるでしょうに、私一人が住んでるなんて、なんだか罪悪感です」


 本当にこの一年、罪悪感に苛まれながら過ごした。しかしお客さんがまったく来なかったわけでもない。昨夏、コミケの後の夜に駅の三人を泊めた。


 あのときだけは、この部屋を借りて本当に良かったと思った。今後こういうことがあるかもしれないし、家族が来る可能性もあるから、やっぱり出るには後ろ髪を引かれる。


「なるほどねー、確かに三、四人くらいで暮らすような部屋だよなぁ」


 子安さんの口調に覇気がない。基本的には飄々としている子安さん。けれどわかりやすい人で、疲れると常人以上にぐったりと、疲労感を全身で体現する。たまに「小百合ママー、たしゅけてー」などとオフィスで言ってしまう。もちろん朝比奈店長ほか周囲はドン引き。でも私にとって子安さんのその甘えはわかりみが深い。


 当の小百合ママは「はいはい、いい子いい子」と、子安さんと、ついでに私の頭をなでなでしてくれる。私は気恥ずかしくなるけど、子安さんは「よっしゃ元気でたー」と両手でハッスルポーズ。その後は本当にサクサクと仕事を進める。


 小百合さん、恐るべし。

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