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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
仙台帰省・宮城の旅9
178/334

大きなあめ玉をころがしていると

「そう、色んなこと」


「と、申しますと?」


「恋は盲目って言うでしょう?」


「うん」


「そうするとね、その人の悪いところまで、どんどん許容してしまって、泥沼に嵌ってしまうこともよくあるの」


「例えば?」


「そうね、例えばその人の趣味がギャンブルだったとして、いくらかお金をつぎ込み過ぎたとしましょうか?」


「それは良くないのでは」


「未来ちゃんは良くないと思っても、その人を好きになってしまったら、少しくらいなら、今回だけなら、またやっちゃったけど、なんとかなるか、なんて、どんどん許容範囲が広がって、借金を背負うことになるかもしれない。借金を背負っても、この人といっしょならば独りよりはマシって、思ってしまうかもしれない、誰かに否定されても、私はそう思ってるんだからいいでしょってなって、最後にはその相手に売り飛ばされてしまう」


「そ、そんな人を好きにはならないよ、私は」


「例えばよ、例えば。大げさな例え話。だけど、好きになってゆく過程の中で、この人といっしょになったら、長い目で見て自分は幸せになれるのか。一時の快楽だけを求めて追っていないか、そこはよく考えなきゃいけないの。結婚式の仕事をしている未来ちゃんにとっては、釈迦に説法かもしれないけどね」


「うーん、まぁ、その、式を挙げてすぐ別れるカップルはいるよ。挙げる前に別れて式がキャンセルになることも」


「そうよね、だからね、何かを成し遂げるには、幸せになりたいのなら、情熱を持ちつつ冷静でなきゃいけない」


「要するにね、私が何を言いたいかっていうと、頑張りなさいと、その一言だけよ」


「え、そ、それだけ?」


「そうよ、能書きは心に留めておいたほうが良いけれど、結局は頑張るしかない。良くないのは、ずーっとずーっと、何もしないで立ち止まっていること。幸せになりたければ、休みながらでも前に進まなきゃね」


「うん、そうだね、進まなきゃ、始まらないね」


「それに彼はきっと、大丈夫よ」


 言われた途端、頬がじゅわっと熱くなった。


「う、うん」


 私が誰を好きかなんて、家族なら言わずとも皆知っている。家に連れてきた時点でバレバレだ。しかもじぃちゃんの葬式にまで。


 ここで会話が途切れ、私もばぁちゃんもお茶を啜った。


 それから私はざらざら砂糖の付いた青い大きな飴玉を舌で転がし始めた。小袋入りで、黄色いのもある。子どものころからずっと知っている、ホッとする味と食感。


 あぁ、子どものころは難しいことなんて考えなくて、世界がとてもシンプルだったな。


 砂利道でたんぽぽの綿毛を吹いて飛ばしたり、クマに追いかけられたり、追いかけられっぱなしではなめられるから大きなシャベルを持って追いかけ回したり、それで次第に仲良くなって。そんな自然な生きかたをしていた。


 ゆっくり溶ける飴玉を舐めていると、そんなことが思い起こされた。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 作品の質を上げるため、来週は休載させていただきます。誠に恐れ入りますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。

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