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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
はじめてのウエディングプランニング
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◇朝寝坊

 うううん、眠い。大変、もう6時だ。緊張して2時間しか眠れなかった。しかも30分も寝坊しちゃったから、急いで仕度しなきゃ。


「ふわぁ~、帰りたい。もう帰ってるか」


 実家暮らしをしていた頃は毎日7時間くらい眠れていたけれど、就職してからは5時間眠れればまぁまぁ良いほう。自分がメインのお仕事と、先輩たちがメインのお仕事それぞれのスケジュール管理や式場との打ち合わせ、それら全てが上手く行く筈もなく、むしろ殆どを理解していなくて、毎日教わることだらけ。朝から晩まで脳みそはフル回転だけど、深夜までヒートアップしたままで、なかなか眠れない。


 連日の寝不足で凝り固まった上半身はバキバキ音をたてながらもぞもぞと起き上がり、ベッドと垂直になる。カーテンを一枚めくると、南向きの窓からレース生地越しにやわらかな光が差し込み、鼻がムズムズしてくしゃみが出そうになった。


「ふわあああっ……」


 寝間着用の白いキャミソールを脱ぐと天へ両手を伸ばし、大あくびをしながらからだを活性化させる。


挿絵(By みてみん)


「はぅわ~ぁ」


 あくびが止まらない起きたくない緊張で胸が苦しい。あと5時間後にはお客さまとご対面。


 キャミソールを脱ごうとするも、左の袖が肘に引っ掛かって外れない。私は寝起きの涙を浮かべたまま、脱ぎかけのそれに顔を擦り付ける。


 はふ~、ひんやりさらっとしてて気持ちいい~。


 癖になる感触はなかなか手放せず、そのまま1分ほど顔を擦り付け、名残を惜しみつつ洗面所へ移動し洗濯機の中へそっと置き入れ、スイッチを入れた。熱帯夜にはズボンを穿かず、下着姿のまま部屋をうろつく姿など、誰にも内緒のみっともない姿と自覚しつつ。


 こんなんじゃ私、お嫁に行けない。


 出勤日の朝食はいつもグラノーラでさっと済ませる。ワイドショーを見ながらお化粧をしていたら、あっという間に7時前の占いコーナー。11月22日生まれ、射手座の私の運勢は3位とまぁまぁ。いつもより1時間遅い占いコーナーを見てしまったということは、もういつもの電車には間に合わないけど、なるべく早く出掛けなきゃ。


「行ってきます」


 お部屋に告げて、スニーカーならあと数分遅くても大丈夫と思いながら靴べらを使ってハイヒールを履き、陽光を浴びながら努めて速足で駅へ向かった。


 土曜日の朝は人通りが少なく、乗り込んだ電車の同じ車両に乗客は数人で開放感がある。おかげで肩の力が少し抜けたかも。平日の混雑した電車は、ちょっと神経がピリピリしてしまう。職場の最寄駅に着くまでの20分、ちょっと仮眠しよう。


 ドア脇の席に腰を下ろした私は仕切り板にもたれ掛かり、すぅっと眠りに堕ちた。


 ―――いけない、この音楽は!


 駅ごとに異なる発車メロディーが失った意識を呼び戻し、下車駅に着いたと気付いた私は斜め向かいの出口をさっとすり抜け、乗り越さずに済んだ。ドアが閉まるまで10秒ほどあったけど、車掌さんに迷惑をかけるような降りかたにならなくて良かったと、十数秒の間に二度胸を撫で下ろした。


 利用者の少ない土休日の朝はホームに駅員さんが立っていないから、本牧さんと会えないのはほぼ確実。駅を通る度、ホームに立つ彼の凛々しい立ち姿が脳裏をよぎる。


 お客さまとのご対面まで、あと3時間。きょうこの日は、夢への新しいステップだ。


 よし、がんばっぺ衣笠未来! 緊張なんかに負けねぇ東北魂、見せてやるっちゃ!

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