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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
お盆休み・同人誌即売会

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もっと違う、何かがある

 お祖父さんが僕らの前から姿を消して間もなく、参列者一同は熱気立ち上る遺骨を割り箸で拾い、骨壺に収めた。


「頭ちっちぇえなぁ」


「俺たちだってこんなもんだっちゃ」


「みんなバカだからこんな歳になっても酒飲みばっかしてんだべぇ」


 他の参列者が黙々と拾う中、お祖父さんの友人らは言いたい放題。各々次は我が身と悟っているようだ。


 納骨は四十九日に行うため、それまでの間、骨壺は衣笠家の仏壇のそばに安置する。


 僕と三浦さんは20時台の新幹線で仙台を発った。座席はグランクラス。サービスの車内食は和軽食、ドリンクは普段飲まない日本酒を二人揃って頼んだ。


 ぽつぽつと蛍のような灯りが瞬く広大な土地を俯瞰しつつ、今宵も列車は何変わりなく東京を目指す。


 グランクラスという静粛性を重視した車両で、僕らは他の旅客と同様、アテンダント以外と会話をしなかった。


 乗り換えた東海道線はグリーン車。こちらも静粛性を重視した車両だが、レジャー帰りの旅客が多く、客室は騒がしい。


 青い座席が配置された2階席。新幹線の車窓とは打って変わり、黄緑とオレンジの帯を纏った車両は有楽町ゆうらくちょうのビル群の中を蛇のようにうねりながらのそのそと縫ってゆく。


 東海道線では、僕が通路側に掛けた。


「きょうも、世界は何変わりなく回り続けるのですよね」


 列車が新橋しんばし駅のホームに差し掛かる直前、三浦さんが口を開いた。


「えぇ、僕も新幹線で同じことを考えていました」


「あら、本牧さんも?」


 その言葉と表情には含みがあった。


「というと?」


「本牧さんは命の場面に立ち会う機会が多いので」


「そうなんですけどね、なぜか今回は」


 三浦さんが静かに鼻で息を吐いた。僕の内側で渦巻くものを飲み込んだようだ。


 僕と三浦さんは大船駅で別れた。彼女は横浜駅で根岸線に乗り換えたほうが早く家に着くのだが、横浜駅周辺より人が少ない大船方面のほうが落ち着くようで、乗車券は律義に大船経由で購入されていた。


 誰もいないボロ家に帰り、僕は夜のニュースを点けて一人思い耽った。


 衣笠さんはわんわん泣き叫ぶと予想していたのだが、静かだった。しかしそれは冷淡なわけではなく、湧き上がる感情を抑えていたのだろう。


 普通ならそう考えるが、大事な人との別れなのに、果たして感情を抑える必要があるのだろうか。


 人目を気にしていた?


 いや、何か違う、もっと違う、何かがある。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 体調不良により先週は休載させていただきました。大変恐縮です。

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