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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
お盆休み・同人誌即売会
118/334

Don’t think feel

「お湯、貯まりましたよ」


「僕はもうちょっと瞑想に浸っていたいので、良かったら衣笠さん先に入ってください」


「そ、そうなんですか? でもお客さまより先に入るのは……」


「いやいや、僕はただお邪魔しているだけでお客さまではありません」


「ふんふんなるほどわかりました。じゃあ先に入ります。でもお邪魔だからって帰っちゃだめですよ。危ないから」


「はい。わかりました」


 深夜帰宅もたまにあるけどと本牧さんは付け加えた。


 リビングで本牧さんとそんな応酬があり、私は彼より先に入浴を始めた。3LDKのお部屋はお風呂も実家に劣らず広く、バスタブはゆったり脚を伸ばせる。ぬるめのお湯に乳白色の入浴剤を入れると、ほんのりフローラルの香りが広がってふーうっと全身の力が抜けてゆく……。


「きもち~」


 お肌もしっとり。夏だからあまり乾燥しないけど、それでもとろっとしたお湯の感触に、中毒性のある快感を覚える。


 本牧さんが先に入浴したくない理由は察しがつく。


 入浴している隙に何かを、例えば下着なんかを盗もうと企んでいるわけでも、ましてや私が入った後のお風呂で妄想しようとかそんなムフフで好都合なことを考えているんじゃなくて、単純に自分の入浴で汚れた浴槽を私に見られたくなかったのだと思う。


 彼はプライドが高いから。


 ならシャワーだけ浴びて出てくればという考えにも至るけれど、掃除ついでにお湯を張ってしまったので、私が後から入浴すると追い炊きが必要になってしまう。そこまで考慮した結果が『後に入る』ということ。


 けどそうなると、私がゆっくり入浴しづらい。本牧さんからすれば好きなだけ入ってくださいだと思うけど、私の場合、いつの間にか眠ってしまって気付いたらお湯が冷たくなってたなんてこともざらにある。


 あまりにも長い時間出てこない私を心配した女慣れした本牧さんがなんの躊躇いもなく浴室の扉を開け私の様子を見に来て成り行き的にいい感じになったとしてもなんだかイマイチ嬉しくない。それは愛し合うではなく、単に私のまぬけの産物だから。


 実家の畑ではうっかり転んで堆肥たいひバケツに頭を突っ込みクマさんに引っ張り上げてもらったり、木の枝にシャツを引っ掛けたり水路に墜ちたりして青空の下、下着丸出しなんて日常茶飯事だけれど、それは他所のお家の人が誰も見てないからいい歳して恥ずかしげもなく平然としていられるのであって、さすがにお風呂で眠ってたなんてまぬけな理由で男性に裸を晒すなど恥辱の極み乙女。


 お風呂に入ってるとき、だいたいこんなことを考えてるから私は成長しないんだ。


 本牧さんみたいになんかすごく高尚で賢いことを考えてれいれば、私も少しくらいは憧れの小百合さんに近付ける、ような気が少しくらいはするような気がしなくもない。


 でも彼は哲学的な話をしつつ、そこに私は私のまま感性で生きていていいんだよっていう意図を感じた。


 話しているときの彼の脳内は言動よりもたくさんの言葉や論理が駆け巡っていて、その中から選んだものを紡ぎ出しているのだと思う。私はそれを、率直にすごいと思った。


 私も会話中は色んなことを考えている。だけど上手にアウトプットできなくて、口籠ったり噛んだりする。


「ううううううん」


 思考が行き詰まり両手を組んで伸びをした。夏の入浴は早くもからだが煮詰まりそう。


 でもなんだか名残惜しくて出られない。後がつかえているぞ、このままだと本当に全裸救出されかねないぞ衣笠未来。


 意を決してからだを起こし、お湯に「ありがとう」と心の中で言って浴槽からおもむろに爪先までを出しきった。

 お読みいただき、また本年もお付き合いいただき誠にありがとうございます!


 すごい早さで過ぎた1年でした。鎌倉で高級肉をいただいてからそろそろ1年……。


 ネットにはあまり浮上せず、創作活動を中心に動き回り、また、読書量が増え、水面下でギアチェンジをしていた、というところでしょうか。


 現在はおそらく2速から3速へ動かしている最中かなといったところです。


 また、地域交流が盛んになり、キャラクターで町興しなんて話も実はありますが、なかなか神奈川県に来られる絵描きさんが見付からず、といった悩ましい場面も(自分で描けるようになったほうが早いかな。

 私も時々仙台へ取材に出掛けますが、地域創作には現地取材が不可欠。地元の方の立場で考えれば当然ですね。

 絵描きとして幅を利かせ始めた小中学校の同級生ともいつかうちのキャラクターとコラボしたり、お互いが出会う日が来るといいななんて思ったりしています。現在進行形。


 本年も支えてくださった皆さまに感謝しつつ、また来年もご縁をつなげ続けていただけましたら幸いです。


 ではでは良いお年を!

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