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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
お盆休み・同人誌即売会
109/334

モノレールで江ノ島へ

「おおお、ジェットコースターみたい!」


「衣笠さん、湘南モノレールは初めて?」


「初めてですよー! いつも見上げてるだけでいつかは乗ってみたいと思ってました!」


 肩甲骨より低い背もたれの四人ボックスで、正面に座る本牧さんに問われた。久里浜さんは私の隣に座っている。


 大船駅を発車したモノレール電車。普通の電車と違って車体の屋根上に車輪があり、そこに架けられた線路にぶら下がって走る。本牧さん曰く懸垂サフェージュ式モノレールというらしい。道路の真上を駆け抜け山を登ったと思ったら狭いトンネルに突入、急加速と蛇行を繰り返して進んでゆく。


 これは正に、公共交通という類のジェットコースター!


 いくつかのトンネルを颯爽と抜けると、大船から約15分で終点の湘南江の島に到着。江の島という割に山の中にあって、海の近くという実感がない。たったいま潜り抜けてきたトンネルの周りは木々に覆われている。その地形は山奥にある仙台の実家周辺とどことなく似ていて、湘南のハワイアンで賑やかなイメージとは相反して古き良き時代の面影が色濃く、静けさが漂っている。


「いやー、私も久しぶりの湘モノ楽しかったわー。さて、それじゃ行こうか!」


 湘南モノレールの思い出を語り合う久里浜さんと本牧さん。私は傍らで二人の会話を聞くけれど、ローカルネタが多くてよくわからない。一つわかったのは、本牧さんは車両整備担当だったころ、通勤でこれを利用していたくらい。


 昭和の薫り漂うコンクリート造りの質素な駅の階段を下り、外へ出た。駅にテナント入りしているのはこれまたなんとノスタルジックな洋風喫茶店。


 ここは本当に湘南?


 しかし駅前の横断歩道を渡ればすぐ目の前に江ノ電の踏切と江ノ島駅。モノレールは湘南江の島駅で江ノ電は江ノ島駅。踏切は分岐点上にあり、レールは左手の対面式ホームへ向かって二手に分かれている。江ノ電は単線だから、列車交換をするためのポイントが多い。


 一気に湘南らしさが出てきた細道は、小綺麗なカフェや昔ながらのラーメン屋さんなどいくつかの飲食店やお土産屋さんが軒を連ね、夕方でも自転車の通行を妨げるくらい観光客と思しき人通りが多い。邪魔にならないよう私たちは周囲に気を配って歩く。


 私は大都会仙台で育ったので、人混みの歩きかたは心得ている。なんてったって大都会育ちだから……。


 そうこうしているうちに地下道をくぐり橋を渡って江ノ島に上陸。江ノ島は島なので本土とは海で隔てられており、乗り物も歩行者も橋を渡って上陸する。


 二人に付いてアップダウンの激しい小路こみちをゆき20分。


「着いたー!」


「わーあ、きれい」


 辿り着いたのは島の頂上、サムエルコッキング苑内シーキャンドル下。


 柵の向こうには地球の丸さを実感できる広い海と街が広がっている。


「あの、せっかくだから灯台に上がりませんか?」


「いやぁ、この時間帯の灯台はカップルで埋め尽くされてるから、彼氏ができたらいっしょに行きなよ」


「か、彼氏ですか!?」


 本牧さんが隣にいるときに。もしかしてわざと?


「そう、彼氏!」


「いや、僕には彼氏を欲する趣味はないので……」


「本牧は彼女連れてくるんだよ!」


 バシッ! と久里浜さんは勢いよく本牧さんの背中をはたき、彼は「いたっ」と一歩前へつんのめった。


 二人のボケとツッコミにクスクスしつつ、もし久里浜さんに恋人がいなければ、きっとこの場面を見た私は嫉妬するだろうとも思った。

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