画家の卵の話
サァっ・・・・・
開け放っている窓から、随分と気持ちのいい風が入ってくる。
今年も、暖かくなってきた。
休憩を終えて、再びキャンバスに向き直る。
パレットには少量の赤と、大量の白。
他には緑、黄緑、青・・・と、かなりカラフルだ。
絵の制作を進めようと、筆に絵具を付け、キャンバスの上を走らせる。
今描いているのは、桜。
今は二月の下旬で、内地なら「気の早い」、|沖縄≪ここ≫では「遅いね?」などと言われるだろう。
季節はずれなのはわかっているが、なぜかどうしても書きたくなってしまった。
下書きされた線画に、色をのせていく。
花弁は淡い桃色 空は深い蒼色 桜の下に生い茂る草は、さわやかな若草色に、新緑を混ぜるように。
絵を描く作業の中で、この色を付けるのが一番好きかもしれない。
しばらくその作業に熱中して、ふと集中が途切れた時。
バタバタバタ・・・・・・
なにやらさわがしい足音が廊下から聞こえてくる。
それだけでもう、人物が誰なのかもわかった。
ガラっ・・
「真衣!・・・・絵は順調?」
勢いよく戸をあけ放ち、ニコっという擬音語がぴったりな笑顔で笑っている、友人ーーー美紀。
「美紀、廊下は走らない・・・真衣、差し入れ持ってきたよ」
遅れて(普通に歩いたのだろう)入ってきて、注意を飛ばす、友人ーーー澪。
その二人に、大笑いしたいのをこらえ、返事をかける。
「うん、順調だよ・・・澪~、差し入れってなあに―?」
「新発売の・・・・・」
「おいしそうだったから!・・・・」
「楽しみだね・・・早く食べよ・・・」
ごく自然に雑談へと発展する。
≪絵・・・・・・・・絵具渇いちゃうなあ・・・ま、いいよね、別に≫
≪今度は、二人を書いてみよっかな・・・・≫
真衣のアイディアに追加されてるとも露しらず、二人は相変わらず漫才を繰り広げている。
そんな二人に、そっと微笑み、自分もそれに参加した。
・・・・・・こっそりと、頭の片隅で次の絵の構成を組み立てつつ。
‘画家の卵の話’
小説ってやっぱりムズカシイデスネ!