プロローグ
青い空。
病院の屋上は空に遮るものがなく、どこまでも終わりのない空色が続いていた。
悩み事などあの青色が消してくれそうだ。
しかし、英明は地上に目を降ろす。
『現実直視をしなくては』
そう思う表情が引きつっていた。
なぜなら、今。英明の視界には意識のなくなった男子高校生六名が、無造作にも積み上げているのが写っているからだ。
その隣では男子高校生の山に背を向けた田崎が竹刀袋に竹刀をしまっていた。その近くでは裕也が山をゲシゲシと片足で蹴り、原口は彼らが生きているのかを確認するかのように屈みながら一人の男子を人差し指でつついている。水野はチャラリンと携帯を鳴らしたかと思うと、その様子を写メで撮影していた。病院の入院服を着た命は、離れた場所で散らばったある物をせっせと鞄につめていて、さらに離れた鉄フェンスにもたれた会長は眉間を寄せた額付近
の眉根を揉んでいた。
こんな光景を英明は見ていた。
部外者だと一体何が起きたのか瞬時に理解できないだろう。
「ねえ、やりすぎじゃない?」
英明は近くにいた命に同意を求めた。がしかし、命は平然とした顔でそれを拒否する。
「なんで? むこうから攻撃してきたのが悪いんじゃないか」
そういわれると否定出来ない。
命のいう通り、彼らは俺達を『SP』と知っていて攻撃してきた奴らだった。
動機は田崎の存在だと思う。この六人は金森に出没するカラーギャングに属している。この病院に入院していた所から見ると、大方田崎に病院送りにされたのだろう。
もともと、田崎はその強さからどのカラーギャングにも恨みを持たれているから、田崎がSPにいる以上僕らも恨みを持たれているのと同じだ。
要するに、カラーギャングの敵は金森区全土の不良の敵。
しかし、SP自体はそんなに弱いグループではないので、このように田崎や天宮、原口を中心としたメンバーで簡単に倒してしまう。
「けどさ、何だかんだ言って英明くんが一番やりすぎだよ」
命にそういわれ、英明は不良の山をみた。
彼らの洋服や皮膚には広い範囲で『火傷』の痕があった……。
*
俺は青空にむかってため息を吐く。
時々考えることがあった。
どうして、俺の周りにはこんな奴らしかいないのだろう。
そもそも、俺はなぜSPに入ることになったのか。
なぜ、俺達はこんな能力を持つのか。
どうして、『二魂』という存在があるのか。
始まりは分かっている。
『あの時』からだったんだ。
俺は、始まりを思い返してみた………。