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プロローグ終「絶望とカミングアウト」

プロローグ終「絶望とカミングアウト」


「カナタの、たった一人の恋人です……!」



その目には涙が見えた。だが声はまさに

決意に満ち溢れていた。


ヒカリに一切の迷いは無かった。

ただカナタを思う気持ちが

¨彼女¨をここまで動かした。



「……………ヒカリ!!」


カナタは心の中の暗闇が一気にヒカリに

照らされるのを感じた。



¨最愛の人¨星影ヒカリ¨が自分を好いている、

認めてくれている。


それだけで、カナタが前を向くには十分すぎる理由だった。




そうカナタは昔から誰にも認められてこなかった。


可愛い美少女に生まれた¨自分¨

心の中の本当の¨自分¨の二人が

常に争っていた。


だがこの瞬間、、カナタはようやく

本来の自分が好きになれた。



「カナタ……!!」


そしてカナタは笑顔を見せた。それはヒカリが3年前別れる前に最後に見せた笑顔と

同じだった。



「…………!!」



胸が熱くなった。気づけばカナタは

ヒカリの胸に飛び込んでいた。




「ヒカリ僕は、僕は、、、」




「分かっているよ。」




ヒカリはそっと背中に腕を回した。

大きな心でカナタを包み込んだ。




「話したいこと、たーくさんあるんだよね!」




「…………!!」



心の底を覗かれたようで、カナタは目を見開いた。



「全部聞くよ。、だって私の¨恋人¨さん。なんだもん!!」



まっすぐに伸ばされたその言葉が、

カナタの心にまっすぐ刺さった。



「ヒカリ、、本当にありがとう……」



胸の奥にじんわりと温もりが広がっていく。ただヒカリが自分を見て、信じ続けてくれたそれだけで、世界のざわめきなんてどうでもよくなった。




周囲から囁きが聞こえる。

耳の奥で、周りの声がざわざわと聞こえた。



「え……恋人って……?」

「さっきのカミングアウト、本気だった

の……?」

「二人って、そういう……?」




けれど、カナタはもうざわめきに揺さぶられない。視線も、囁きも、何もかも遠くに感じる。

ただヒカリの笑顔だけが、鮮明に、暖かく、心に残っていた。




その時、教卓の前に担任教師が立った。


「みんな落ち着いて下さい………!」

ざわめきは一瞬で沈み、教室には静けさが戻る。



「まだ自己紹介の途中……自己紹介以外の人は冷やかし、、暴言に近いものは辞めなさい」



「…………!」


冷やかしをしていた女子グループや男子グループは不服そうな顔をしていた。




カナタは対照的に肩の力を抜き、深く息を吐いた。目の前のヒカリの笑顔を胸に、世界が少し柔らかく見える。


これまで抱えてきた孤独も、不安も、少しだけ遠くに感じられた。



担任は出席簿を手に、淡々と他の生徒の自己紹介を進める。


周囲のざわめきはまだかすかに残るけれど

カナタの心にはもはや届かった。


見上げればヒカリの瞳がそこにある——確かに、自分を受け入れてくれる人がいる。




カナタは胸の中で確かに思う、


「僕は、、ヒカリを一生愛する、、

君を絶対守り抜く、、!!」


世界のざわめきの向こうに、確かな安心と決意がそこにはあった。




「ではこれから皆さんで写真を撮ります。」  



自己紹介が終わり、担任が写真撮影の準備を告げる。

教室の前にカメラがセットされ、順番に前に出るよう指示が出た。



「………そういえばヒナが一緒に写真撮りたいって言ってたよね!ヒナの近くいこ!」


ヒカリは笑顔で言った





「………うん、いいよ」

ざわめきはまだかすかに残るが、カナタの心には届かない。視界の端で誰かが指を刺し、


誰かが小声で囁く。だが、それも遠くの

世界の音のように感じられた。



「ねぇ、ヒナ、一緒に撮ろうよ!」


ヒカリが隣のヒナに呼びかける。 

だがヒナは一瞬立ち止まり、目を逸らした。




「私、こっちで撮るから、、ヒカリ、ごめんね!」


と明らかに作った笑顔で答えた。



「そっか………いいよ!また今度ね、!」



とヒカリは笑顔で答えた。




ヒカリは気づいてなかったが、カナタはヒナの真意に完全に気づいていた。



「ヒナ…………!」




ヒナはクラスで浮きたくなかったからヒカリ、カナタに近いただけであり

真意からカナタを認めてくれるわけではない、

と言う事が話さずとも伝わった。



「まぁいい…か…」


カナタは少し驚いたが、気にせずヒカリの隣に立つ。

ヒカリの肩にそっと触れる温もりだけで、胸の奥の緊張がふっと緩む。


でも、


「これでいい……ヒカリが隣にいてくれれば、他はどうでもいい」


カナタは心の中でそう呟き、ヒカリ、目を合わせた


カメラマンの声が響く。「はい、みんな笑顔! チーズ!」



フラッシュが光り、クラス全体の姿が収められる。カナタはヒカリと目を合わせ、自然に微笑みを返す。


その瞬間、ヒナの視線さえも、遠くの背景のように感じられた。

目に映るのはヒカリの瞳、確かに自分を受け入れ、信じてくれる存在だった。

 ヒナは距離をとったままだったが、カナタの心はもう揺れない。

ヒカリの笑顔だけが鮮明に、暖かく、心に残っていた。



そうして写真撮影が終わった。



「では皆さん、先生がプリントを取ってくる間、席を自由に立って交流してOKとします。」


と言い先生は教室から出て行った。





「カナタ、、私ちょっとトイレ行ってくるね!」



ヒカリはもじもじしながらカナタに言った



「………わかった。行ってらっしゃい」



ヒカリは少し面目無さそうにトイレに行った。



カナタは教室を見渡してみた。




「皆、自己紹介し合ってるな………」



クラスのみんなは自己紹介しあっていた。だがカナタはそれを一歩引いた目線で見ていた。



「ヒナもあっちにいる、、僕たちとはもう関わることないだろうな」



その時ヒナと目があったが気まずそうな目でこちらを見ていた。




とその時、、黒髪で少し長めの髪を持つ少年がカナタに向かって近づいてきた。




「やぁ君少し………僕と話そうよ」




「……………!」


肩までかかる髪は光を受けて青みがかった黒に見え、切れ長の瞳は知的で静か。

身長は175センチくらい、、整った顔立ちと均整の取れた体格、柔らかく浮かべた微笑み。

ドラマや映画で見る俳優とはまさにこの事。教室の空気とは少し違う、近寄りがたいミステリアスな存在感を放っていた。




「ねぇ、ここ空いてる?」



「………まぁ、空いてるよ」



少年は小さく頷き、静かに席に腰を下ろした。

沈黙のあと、少年が低く自己紹介を始める。


「僕の名前は皇崎ヤマト、、綺麗なものを見るのが好きかな、、、、、よろしく……」



カナタは黒板に目を向けたまま淡々と答えた。




「………神宮カナタ」




ヤマトは腕を伸ばし疑問そうに質問した




「君、、なんで男子制服を着ているの?」





「さっきも言ったよね……僕は

トランスジェンダー、心は男なんだ…」



カナタは気怠そうに答えた。脳裏にはさっきの出来事が頭に焼き付いていたからだ。





「それは勿体無い、、、」



「勿体無い……?」




カナタは発言に驚き顔を上げた。それに対し

ヤマトは少し横顔を覗き込み、低く呟いた。



「君、、、」



ヤマトは顔に笑みを浮かべながらいった。

「やっぱり君は、、すごく綺麗だね」




「…………は?」


カナタはその発言に体を寄せて近づけた。



「ぱっちりした二重、、整った顔立ち、、魅力的な身体、、、君みたいな美少女、、、僕は他に見た事がない、、、」




「…………!」


2人を包み込む空気が変わった。




「君、、いやカナタちゃん、、、」




「君、、僕と付き合わないか?」




「えっ……!」



凍りつくような一瞬……

だがカナタは即座に言い返した。



「悪いけど¨僕には¨他に好きな人がいるから

無理」





「…………!!さては君、、、そうかっ………」



ヤマトは大きく笑い、目だけでじっとカナタを見つめる。


その視線には、微かな好奇心と、計り知れない深さがあった。



「一つ聞くけどカナタ、、君は¨パートナー¨に何を求めるのかな??、顔、、性格、、はたまたお金??」



「………そんなの性格に決まってるだろ」



とカナタは迷わず答えた。

事実カナタはヒカリを性格で見ていたからだ




「それは違うね、、」



ヤマトはゆっくり近づき、唐突に

カナタを自らの胸に抱き寄せた。

いわゆる¨ハグ¨をカナタに仕掛けた。



「………………!!!!!」



カナタは驚き、身体を大きく跳ねた!



「僕は見た目が良ければなんでもいい……!!」






「……お前っ、、、、!!」




その行動をカナタが許すわけがなかった。



「どれだけ強がっても君はただの女の子だよ………」


反射的に手を振り払おうとするカナタだが、その前にヤマトはさらりと手を引いた。



「敵意はないさ、、ただ僕は君と仲良くしたいだけだ………」


挑発気味にヤマトはカナタに手を差し伸べた。



「僕が君を女の子、、彼女にしてみせる、、、」




「こっ……この……!!」



拳を振り上げようとした瞬間



「いいのかな? 僕と一緒にいるところを見られて……君の¨恋人¨さんが、戻ってきたよ……」



カナタの視線が一瞬凍る。


心臓の音が耳の奥で跳ね回り、思わず息を詰める。


「…………!!」


その場の空気が、一瞬で張り詰めた。



そうしてヤマトは戻って行った。






「…………」



カナタの胸には怒り、憤り、悔しさ、やり場のない感情が渦を巻いていた。



「………カナタ!」



「カナタ、ごめん!!トイレの近くに自販機あったからジュース選んじゃってた」





「……………」



カナタは、ヒカリにあの場面を見られなかったことに、ひとまず胸を撫でおろしていた。




「カナタ、、新しい友達できた??」


「まぁ、、まぁまあかな……」



だがヒカリはカナタの異変を察知していた。



「カナタ……絶対にね。私みたいにカナタを受け入れてくれる人、ちゃんと現れるから……安心して!!」




「………うん、ありがとう」



だがアオイの中ではまださっきの出来事が

心で渦を巻いていた。






「受け入れる………??」




「………!!」



その時、女子の4人グループが近づいてきた。



「ねぇ、神宮カナタちゃんで名前合ってる?」



リーダー格らしい赤髪の少女が、わざと “ちゃん”付けで呼んでくる。


肩にかかる鮮やかな赤髪は光を受けるたびに揺れ、ゆるく外巻きに整えられている。

切れ長の目元には薄くアイラインが入っていて、笑っていてもどこか上から見下ろすような鋭さがあった。




「まぁ、そうだけど。」




少し不服そうにカナタは返した。





「うちはミソラ。三年間よろしくね。」



一目で距離感のわかる笑みだった。



その後ろの三人は、くすくすと笑いながら、

カナタを値踏みするような視線を向ける。



「銀髪って珍しいね。染めてるの?」



「地毛。」



「へぇー、すご。なんか…モデルみたい」



褒め言葉に聞こえた。でも声のトーンは少しだけ湿っていた。



「それ…男子制服、、キャラ作ってるの?」


後ろの一人が笑いながら言う。


「やめなよー理佐、、!!」


「でも、良いんじゃない、、元が可愛いから。」




「別に、僕は¨自分¨を出してるだけだよ。。」



とカナタはスパッと返した。



カナタは、この手の扱いには慣れていた。それにヒカリが横にいる今、弱い自分を見せるわけにはいかなかった。



その言葉にミソラがわずかに眉を上げる。



「へぇ、強気。そういうとこ男子ウケしそう。」




「………男子ウケとか考えたことないね。」



カナタはまっすぐな目で答えた。



「ほんとに? だって目立つよ? 教室入ってきた瞬間、みんな見てたもん。」



「見られてたのは、珍しい髪の色だからでしょ。」



「いや………顔だよ。

神崎さんすごーい。可愛ーい」



クスクスと笑いが重なった。

ヒカリが机を叩くように立ち上がる。



「ちょっと、なにそれ。最初から絡み方きつくない?」



「え、別に普通じゃない?」美空が振り向く。


「話してるだけだし。ね?」

後ろの三人が口を揃えて「うんうん」と頷く。


ヒカリは唇を噛んで言葉を探した。



「“普通”って言い方で済ませないでよ。誰が聞いても嫌味だってわかる。」




「うわーヒカリさんめっちゃ怒ってるよ」


美空が片眉を上げて、薄く笑う。




「謝らなきゃー?」


と周りが嘲笑する感じで言った。




「良い加減にして、、、」

「私、カナタがこんなに悲しそうな顔するの初めて見た。だから、、」



「じゃあ本人に聞いてみよ!

カナタちゃん、嫌だった?」



全員の視線が一斉に集まった。カナタはゆっくりと顔を上げる。


「……別に、慣れてるから。」



静かな声だった。それがかえって、場の温度をさらに上げた



「慣れてるってさヒカリちゃん、、、!!」


美空が挑むように一歩近づく。

「そういう目で見られること?」


「そう。珍しいもの扱いされること。」


「……へぇ。」ミソラが小さく笑う。

「大変だね、美人は。」



その言い方にヒカリは我慢できるわけがなかった。


「もうやめなって言ってるでしょ!」



「ヒカリ!」とカナタが制止する。



「なんかマジギレしてるよ!!」



ヒナがそう言うと周りは足を引き始めた。



「もう行こ………ヒカリさん、

怒っちゃってるし、、」



といってヒカリ、カナダのそばから出て行った。だが4人はすこし笑っているようにも見えた。




「なんでそんな言い方するの!? 」




とヒカリは大きな声で言った。カナタを

笑って逃げるミソラ達を許すつもり

など更々なかった。




「ヒカリ………いいんだ!!僕は

ヒカリさえいれば他に友達だなんて要らない。」





「カナタ、、!!」



カナタは落ち着き深く息を吸い、

決意したように言った。




「ヒカリ………話したい事がある、、放課後中央公園に来てほしい。」




「……………!!」



2人はそれ以上言葉を交わさぬまま

入学式は終わった




「……………帰って準備しよう」




カナタは1人で家に帰り着替えを済ませた。



着替えを済ませ、布団に身を沈めると、頭の中はヒカリのことばかり。




ーーー私のたった1人の恋人ですーーー




「……………っ」




胸の奥で小さく刺さる。みんなの前で告白させてしまったこと、カナタはちょっと後悔していた。




「きちんと話そう、、自分の本心を………」



そう言うとカナタは家を出て行った。



しばらく歩き公園の近くまでついた。

 


「…………ヒカリ!!」




ヒカリは何分も前から待っていたようにも見えた。


「……………!!」



川沿いに着くと、そこにはヒカリがもう待っていた。

ふわりと可愛い服、頬はほんのり赤く、覚悟がその瞳に宿っている。


「カナタ………」



2人は言葉を返さずとも自然に公園のベンチに座った。


そしてカナタは話し始めた。



「今日、勇気を出して言えてよかった…」



「………うん」


ヒカリはしばらく黙っていた。風の音と、川の流れだけが耳に残る。




「ヒカリ……君が助けてくれなかったら、僕は……」



カナタは何度も声が途切れそうになりながら伝えた。





「正直、、最初に聞いたときは……やっぱり、

びっくりした。」



「……………」



「でもね、びっくりしたのは嫌だったからじゃないよ、、、!!」





ヒカリは小さく笑い、少し涙をにじませながら言った。



「アオイが自分のことを、ちゃんと自分の言葉で話してくれたから!!だから胸がぎゅってなったの」




「………!!」

カナタはその瞬間目に涙が滲むのを感じた。




「ずっと、、ずっと……怖かったんだ。ヒカリに嫌われるかもしれないって、、」



「………うん。」




「ヒカリはそんな子じゃないのに!そんなこと言うわけないのに!!ずっと僕は弱かった………!」




カナタの喉がかすかに震えた。


ヒカリの目を見ると、ヒカリもまっすぐで、少し涙がにじんでいた。




「ヒカリ……本当に受け入れてくれて………ありがとう、」




「………私こそ、ありがとう。勇気出して話してくれて」



二人の間を桜の花びらが通り過ぎる。



少し間が空いて、カナタは真剣な面持ちで話した。。




「大事な話がある」



「………うん」





アオイは深呼吸して、ヒカリの瞳を見つめる。

桜の花びらがふたりの間をゆらりと舞った。




「¨僕¨はやっぱりヒカリが好きだ。好きで好きでたまらない………この先君がどんな

過ちを犯そうが君を愛す………!!」




「だから、、、だから!!」



「僕の恋人になってくれますか?」





ヒカリの瞳が見開かれ、声が震える。「……カナタ、私……」



けれどその言葉は、雨混じりの風にかき消された。花びらが、静かに二人の間を

すり抜けていった。



「……明日、ちゃんと伝えたい」

ヒカリはカナタに見せない真面目な表情で背を向け、夕陽の中を歩き出す。



カナタは何も言わずにただ頷いた。



ひらり、、花びらが手のひらに落ち、

淡い光の中で小さな約束のように輝く。




「言わなきゃいけないの、ちゃんと、自分の言葉で。……だから、明日もう一度ここで会って、、ほしい。。」



春風がふたりの間を抜けていく。だがそれはまさに春の訪れを表していた。

淡い光の中で、それがまるで約束の証のように見えた。



そうして2人は公園で別れ家に帰った。




道中カナタは、、3年前を思い出していた。

全てが明日へ繋がっているそう考えて………




「…………ただいま」


家に入ると真っ先にベッドに入った。



その静けさの中、今日の出来事がまるで映画のように何度も頭をよぎる。


「僕の恋人になってくれますか?」

その瞬間、胸の奥がきゅっと痛くなった。ずっと一緒にいた幼なじみ。泣き顔も笑い方も、誰より知っている。

けれど今日のヒカリは、少し違って見えた。まっすぐで、どこか大人びていて、もう“昔のヒカリではなかった。



カナタは天井を見つめながら、ため息をつく。「恋人」――その言葉が、何度も頭の中でこだまする。

本当に、嬉しかった。でも、どう答えればいいのか、わからなかった。




「……明日、絶対に!!!」




そう決意を固めカナタは夕飯、、

風呂を済ませて寝る準備を整えた。。。




「結局、母さん、、帰って来なかったな。」



カナタは部屋の明かりを落とし、布団の中に身を沈めた。


夜風がカーテンを揺らし、街の明かりが遠くで瞬いている。

月は雲に隠れ、ほんの少し、不安の影が胸に差した。目を閉じる。

そのまま夢と現実の境が溶けていく。ヒカリの笑顔が、そのまま淡い光の中に浮かんで見えた。





そして翌日、土曜日、

今日は入学式の振り返えで休みの日だ

空は重たく、遠くで雷の音がかすかに響いていた。天気は悪いが彼方の心は絶好調だった。



「よし、着替えはこれで……行こう」


今日はヒカリとの約束の日。男子っぽくかっこいい服を選び、長い髪をまとめ、男の子らしくセットする。


「告白が終わったら、ヒカリとご飯……うまくいくといいな」





カナタはヒカリと一緒にデートするのが

小さい頃からの夢だった。

カナタは小さな期待に胸を躍らせていた。



「行ってきまーす」



カナタは家を出ると、鞄を胸に抱え、昨日の

約束の場所――河川敷へ向かった。



風が強く、桜の花びらが舞い上がる。空の色は灰色で、静けさを含んでいる。



桜の花びらが風に舞い、灰色の空が不吉な静けさを漂わせていた。



「……ヒカリ、もう来てるかな」




昨日、、ヒカリに助けてもらった。今度は自分の想いを、きちんと返したい。そんなまっすぐな思いで、足を速めた。




カナタにとってヒカリはもはや単純な

恋人を超えていた。クラス皆んなの前で助けてくれた事。カナタは絶対忘れることはない、、







だが、、ーー次の瞬間――




空が白く閃いた。


雷鳴が地を割るように響き、空気が焼ける匂いがした。



とんでもなく大きな雷が落ちた。

前触れは全く無かった。



「っ……!何だ!!」



カナタの視線が反射的に川の方へ向く。稲光が落ちたのは――




――まさに、これから向かう河川敷だったーー




「……嘘、だろ、、、」


胸の鼓動が跳ね上がる。傘を開く暇もなく、カナタは走り出した。雨が頬を叩き、服を濡らす。


風に煽られ、息が苦しい。それでも止まれなかった。




「ヒカリ、、、ヒカリが危ない!!!」




服がびしょびしょになろうが、

どれだけ服装が乱れようがお構いなし、、

カナタは全速力で走った




(お願い……無事でいて、ヒカリ……!)




川沿いにたどり着くと、激しい雨の中にひとりの影が立っていた。濡れた髪を風に揺らし、服の袖から水が滴っている。





「ヒカリ!!!」



だがヒカリは振り向かなかった。




「こんな土砂降りの日に呼び出してごめん!、、

ヒカリ、、大丈夫!!??」



カナタは声を張り上げ、駆け寄った。







だが、ヒカリは反応しない。ゆっくりと振り向いたその瞳は、どこか虚ろで、深い霧の奥に沈んでいるようだった。



「……ヒカリ!!」




息を切らせながら肩に触れようとした瞬間――ヒカリが、一歩、後ずさった。



「え、、?」


とヒカリであることは間違いなかったが

ヒカリは反応してくれなかった。








「よかったヒカリ、、無事で、、心配したんだから、、!!」



その唇が、震えるように動く。





「……誰?」








「えっ………!!」










「あなたは……誰?」





¨ア¨ナ¨タ¨ハ¨ダ¨レ¨???????????





絶望とカミングアウト「終」

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