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『世界最強――平和を守りすぎた男』  作者: くりょ


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5話 世界最強とは



ルナは、しばらく言葉を探すように視線を彷徨わせ、

やがて、意を決したように口を開いた。

「……スノーマン様は……

とても、優しい方なのですね……」


その声は、どこか祈るようだった。

「でしたら……

もし、わたしが……

外で倒れ、凍え、

今にも死にそうになっていたら……」


一瞬、言葉が詰まる。

「……助けに、来てくださる……

なんてことは……ありませんか……?」



王ヴェルは、即座に首を振った。

「それは、違う」


呆れたように、だがはっきりと告げる。

「スノーマンが優しいことに異論はない。

だが――勘違いをするでない」


玉座に腰掛けたまま、

王は淡々と語る。

「この国に住まう者は、皆だ。


助け合いの精神が、異常なほど高い」

「それは我も含め、

国民全員が共通して持つ価値観だと言っていい」


ルナは、その言葉に思わず息を呑んだ。

ヴェルは続ける。

「つまりだ」

「そなたが一人で凍えて倒れていれば、


それを見た者は――

誰であろうと、迷わず助けに行く」

「その人数は、あまりにも多い」

「一人一人に

『あなたがスノーマンですか?』

と聞いて回っても、

皆が口を揃えて、

『違う』と言うだろう」


王は、少しだけ目を細める。

「たとえ、そなたが

『放っておいてくれ』

と懇願したとしてもな」

「その願いを跳ねのけて、

助けてしまう」

「――それが、この国だ」


ルナは、胸の奥が熱くなるのを感じた。

(なんて……国……)


だが同時に、

ひとつの事実を、はっきりと理解してしまう。

――自分の考えていた“策”は、

この国では、

そしてスノーマンに対しては、

完全に無意味だということを。



ヴェルは、しばし沈黙した後、

ひとつの仮説を口にした。

「ゆえに、

直接的な対話は、ほぼ不可能と考えるべきだろう」

「だがな……

奇妙なことに」


王の声が、わずかに低くなる。

「スノーマンは、

この国の状況を把握するのが、

異様なほど早い」

「不足しているもの、

困っていること、

危険の芽――」

「それらを理解し、補う速度は、

王である私と、

ほぼ同等と言っていい」



ルナは、息を潜める。

「ゆえに――

今、そなたらがここで話したことも……」

「すでに、

スノーマンは掴んでいる可能性がある」

「……ですが」



ヴェルは、首を横に振る。

「それは、賭けに過ぎぬ」

「だからこそ――

噂を流す」

「……う、噂……ですか?」

ルナは思わず聞き返した。


ヴェルは、静かに言った。

「近々、

ノースリガの地で迷宮が崩壊し、

災害級の魔物が溢れ出す」


「そして、その魔物たちが――

このアイスヴェルランドへも流れ込み、

人々は、皆、終わりを迎える……」

「そういう噂だ」


ルナは、慌てて首を振る。

「た、たしかに……

魔物が溢れれば、

大災害になるでしょう……!」

「ですが……

アイスヴェルランドには……

それは……訪れないのでは……?」



ヴェルは、腹を抱えて笑った。


「はははは!」

「そなたは、

本当に優しいな」

「そうだ。

アイスヴェルランドでは、

そんなことは起きぬ」

「なぜなら――

スノーマンがいるからだ」


そして、

その笑みの奥に、

確信を宿したまま続ける。

「だがな」

「スノーマンが存在していても、

この地に“災いが迫る可能性がある”

という話を広めれば――」

「やつは、

その災害の“根”を、

我らが知らぬ間に摘み取る」

「それが――

世界最強の行動力というものだ」



ルナは、思わず吹き出した。

「あは……は、は……」

「……そんなわけ、ありませんよ……」


そう言いながらも、

声は震えている。

「……ですが……

それに、頼るしかありません……」

深く頭を下げる。

「どうか……お願いします……」


ヴェルは、にやりと笑った。

「すでに――

その迷宮とやらへ、

向かっていたりしてな」

「……そんな……

まさかです……」

「この話をしたのは、

この地では……

この場が、初めてです……」


王は、笑みを消し、

真剣な表情で言った。

「場所など、関係ない」

「我らの意思も、関係ない」

「――世界最強とは、

そういう存在だ」


そうして、

この話題は終わった。

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