4話 スノーマンの風貌
ルナは、思わず声を詰まらせた。
「ど……どうしても……
どうしても、スノーマン様にお会いしなければ……」
焦りが、はっきりと表に出始める。
その必死な姿を見て、
王ヴェルはしばし考え込むように顎に手を当て――
やがて、ひとつの提案を口にした。
「……ひとつ、面白い話をしよう」
「スノーマン、と呼ばれている存在が
なぜ“男”だと分かるのか……
気にならぬか?」
ルナは、目を見開く。
「た……たしかに……!!
誰も正体を知らないのに、
なぜ男だと分かるのですか!?」
ヴェルは、どこか楽しげに笑った。
「ああ。
スノーマン“らしき人物”を見た、
という目撃情報は、確かに存在する」
ルナは息を呑む。
「……ですがな」
王の声が、少しだけ低くなる。
「その姿が……
あまりにも、異様でな」
沈黙が落ちる。
「――紙袋を、かぶっていた」
「……紙袋……?」
ルナの声は、間の抜けたものになった。
ヴェルは淡々と続ける。
「下半身には、パンツをひとつ」
(……そりゃ履くでしょ!!
こんな寒い国で!!)
ルナの心の中で、
思わず盛大なツッコミが炸裂する。
だが、
ヴェルの言葉は、そこで止まった。
「…………?」
「……あの……
紙袋をかぶって……
パンツひとつで……
その……続きは……?」
恐る恐る尋ねるルナ。
ヴェルは、あっさり言った。
「ない」
「……え?」
「それだけだ」
ルナは混乱する。
「えっと……
その目撃は……
暖かい時期だった、とか……?」
ヴェルは首を横に振る。
「今より、数段寒い時期だ。
むしろ、今が“暖かい”と言っていい」
「……で、では……
昼間……?」
「夜だ」
あまりにも当然のように言われ、
ルナの思考が追いつかない。
「吹雪の夜、
家の外で偶然見たという」
ヴェルは語る。
「紙袋をかぶり、
パンツひとつの男が――
巨大な魔物を、引きずりながら歩いていた、とな」
ルナは、完全に言葉を失った。
「……そしてな」
ヴェルは続ける。
「似たような目撃例が、
いくつも報告されている」
「十中八九……
それが、スノーマンだろう」
ルナは、震える声で尋ねる。
「い……一体……
なぜ……そんな格好で……?」
ヴェルは、少しだけ真面目な表情になった。
「正体を隠すためだろうな」
「……それなら……
暖かい服を着て……
フードをかぶれば……」
ルナの言葉を、
ヴェルは静かに遮った。
「それが、できんのだ」
「……?」
「この国ではな」
ヴェルはため息をつく。
「人を識別するため、
着る服の型、
フードの色、
装飾の組み合わせまで――
すべて、家系ごとに厳密に決められている」
ルナは、呆然とする。
「な……なぜ……
そんなことを……?」
ヴェルは、苦笑した。
「そなたらと、同じ理由だ」
「……同じ……?」
「ああ」
王は、静かに告げる。
「スノーマンの正体を特定しようと、
かつて政策を打ったことがあってな」
一瞬、間を置き――
「まさか……
紙袋に、パンツひとつとは……
誰も、想像しなかったがな」
「ハッハッハ」
乾いた笑いが、
広い玉座の間に響く。
ルナは、
その場に立ち尽くしたまま――
完全に、絶句していた。




