スノーマンは休めない。
その頃、ルイはぽつりと呟いていた。
「……スノーマンじゃなくて、俺がやったんだけどなぁ」
誰に聞かせるでもなく、
それでもどこか申し訳なさそうに、軽い口調で。
「……ごめん」
自分の行動が、
そのまま“スノーマン”という存在の評価として独り歩きしている。
その事実を知った時、ルイは肩を落とすしかなかった。
ルイにとって、スノーマンとは自分ではない。
どこかに“本物のスノーマン”がいて、
自分はただ、その影を借りて動いているだけ――
そんな感覚が、ずっと抜けないでいた。
「はぁ……にしても、えらいことになったな……」
まさか、ここまで事態が大きくなるとは思ってもいなかった。
原因は明白だった。
人の流入。
避難民の増加。
そして――食料の枯渇。
町に並んでいた食料は、一斉に売り切れた。
ルイが日々調達していた肉類も、
アイスヴェルから、あっという間に姿を消した。
「お金があっても……食べ物がなかったら意味ないよな……」
頭を掻きながら、ルイは苦笑する。
だがこの問題は、
彼一人の悩みではなかった。
アイスヴェルの王、ヴェルもまた、
同じ現実を前にしていた。
食料の供給が追いつかない。
財はある。
だが、肝心の“物”がない。
普通なら焦る局面だ。
だが、ヴェルは違った。
「……問題ない」
むしろ、好機とすら捉えていた。
なぜなら――
どうせ、スノーマンが解決する。
その一点だけを、
ヴェルは疑っていなかった。
そして王は、国民に告げる。
「明日の朝には――
食料はきっと、
何者かによって調達されるであろう!」
根拠はない。
だが、確信だけはあった。
他力本願。
それも極まった形だ。
だがその言葉は、
結果的に、スノーマン――
否、ルイにとって、
これ以上なく“効く一手”となった。
(……要するに)
(「おまえのせいで皆が困ってるんだから、
明日の朝までに何とかしてこい」ってことだよな……)
ルイの中で、
次にやるべきことは、もはや決まっていた。
夜のうちに山へ入り、
魔物や動物を狩り、
解体し、
朝までに運び込む。
ただ、それだけ。
「まぁ……俺のせいだしな」
誰を責めるでもなく、
誰に恨みを向けるでもなく。
「迷惑、かけっぱなしってのも……良くないよな」
そう呟きながら、
ルイは静かに立ち上がる。
皮肉なことに――
誰一人として、
スノーマンを責めている者はいなかった。
だからこそ、
その背中は、
今日もまた、夜へと向かう。




