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『世界最強――平和を守りすぎた男』  作者: くりょ


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27話 疲れはてたジン

必死の形相で、

バナードとファルコンの一団は駆け出していた。

冷たい空気が肺を切り裂く。


足元の地面は蹴散らされ、息は白く弾ける。

「ねぇ……ジン……!」

走りながら、ミサが声を絞り出す。

「私たち……捨てた装備……回収しなくていいの……?」

一瞬の迷い。

だが――

「だめだ!!」

即座に、ジンが叫んだ。

「まずは事実確認が最優先だ!

 装備なんて、後でいくらでも――」

その言葉を最後まで聞く間もなく、

前方の影がさらに速度を上げた。

――バナードだ。

「……すごい」

ジンは思わず呟く。

「さすが……王国最強と謳われただけはある……」

年齢など感じさせない脚力。

呼吸一つ乱さず、地を蹴るたび距離が広がっていく。

「負けてられない……!」

ジンも全力で追いすがる。

だが――

当のバナードは、周囲など気にも留めていなかった。

(――どうでもいい)

心の中で、彼はそう切り捨てていた。

恐怖も、迷いも、疑念もない。

ヴェンが言った。

それだけで、事実だ。

確認とは、疑う行為ではない。

ただ――

一刻も早く、王へ届けるための手続きにすぎなかった。

(消滅したと言うなら、消滅したのだ)

それが、

彼のヴェンへの絶対的な信頼だった。

背後から、ジンの声が飛ぶ。

「バナード様!

その背中……まさに王国最強……!」

走りながら、称賛を送るジン。

バナードは応えない。

ただ――

追いすがってくるファルコンたちに、

内心で短く評価を下す。

(……たいした者たちだ)

だが――

(それでも、ここで負けるわけにはいかん)

理由もなく、

奇妙な闘志が胸を焦がしていた。

迷宮を確認するだけのはずの行為が、

なぜか彼の本能を刺激していた。

「はぁ……はぁ……!」

ミサの声がかすれる。

「ちょ、ちょっと……もう……」

「今日は一日、走りっぱなしだぞ……!」

デイも限界が近い。

次第に、距離が開いていく。

――そして。

最初に迷宮へ辿り着いたのは、

やはりバナードだった。

迷うことなく、内部へ踏み込む。

視界に映るもの。

倒れ伏す魔物。

破壊された壁。

生命の気配は――ない。

一瞥。

それだけで十分だった。

「……戻るぞ」

短く呟き、

バナードは踵を返した。

迷宮の奥へ進むことすらしない。

彼にとって、

確認は完了していた。

そして――

来た道を、再び全力で駆け戻る。

途中、まだ迷宮に辿り着いていない

ファルコンの面々とすれ違う。

「えっ!?

もう戻るんですか!?」

バナードは立ち止まらない。

「平和は保たれた」

それだけを告げる。

「急げ!

陛下に伝えねばならん!!」

風のように、去っていく背中。

やがて――

ようやく迷宮に辿り着いたファルコンたちは、

内部でジンの姿を見つけた。

彼は地面に座り込み、

力の抜けた笑みを浮かべていた。

「……ジン!?

どうしたの!?」

ミサが駆け寄る。

ジンは乾いた笑いを漏らす。

「……全部、終わってた……」

「……え?」

「はは……

 なんだったんだよ、俺たち……」

張り詰めていたものが、

一気に崩れ落ちた表情だった。

ミサは、すぐに顔を上げる。

「じゃあ!

装備、取り戻さないと!!」

「……だな」


ファルコンの一団は、

再び迷宮を出て走り出す。

ジンは立ち上がりながら、

空を仰いだ。

「……一体、何が起きたんだよ……」


疲労の底で、

それでもどこか笑ってしまう自分がいた。

――すべてが終わった後で、

何も知らないまま走り続けていたことに。

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