Ep.7 Side太一
駅構内にあるカラオケ。
放課後、俺−−−川口太一と、ヒョロガリイケメンこと西尾は、喉を枯らしてはドリンクを飲んでを繰り返し、熱唱していた。
「ぶはぁっ! やっぱ放課後カラオケはいいな......! 部活も休みだし、普段の疲れはこれで吹き飛ぶ気がするわ」
「そう思ってるの、太一だけだと思うけど......。かれこれ2時間ぶっ通しで歌える気力も体力も僕にはないよ」
「何言ってんだ、お前だって満更でもなくアニソン熱唱してただろ」
「太一に着いて来ておいて、一人だけ歌わないのもおかしな話じゃない? あ、このメロンソーダめちゃくちゃ美味い」
ふむ、たしかにそれもそうか......。
「まぁ、晴秋がいたらもっと盛り上がっただろうけどな」
「太一、あの人と友達なの? 僕は今年から知り合ったから二人の関係性よくわからないんだけど」
少なくとも、太一と仲良くなれそうな雰囲気はしてなさそうだよね、寺川君。
そういう尾西の表情はまるでこの世の謎に出会ったかのようだった。
いやそこまで疑問に思うこともないだろ......。
「まぁ、小さい頃からの腐れ縁てやつ? 小学校、中学校も同じだったし、家も近所だからなぁー......。別に嫌な奴じゃないし、なんなら見てて面白いぐらいだけど」
「それ、褒めてるの?」
「さぁ? しらねー......」
まあ晴秋のことは置いといて、と、俺は手を叩く。
今日、カラオケに来たのは晴秋のことを話すためではなく、もっと重大な話−−−をするためだ。
「で、尾西お前、本気で京坂さんに告白するのか」
「ぶっっっっ.........!」
飲んでいたメロンソーダを吹き出す尾西。
ヒヒ! 作戦成功!
「な、ななな、なんで急にその話になるの?」
「だってお前昼休みの時言ってただろ? 今度の告白イベントは京坂さん一筋だって」
告白イベント−−−通称、〈爆恋会 〉が開催されるのは、夏休み直前に行われる文化祭のクライマックス。
つまりオオトリイベント!
文化祭......なんていうのは建前で、俺らの学校の生徒は、この爆恋会に参加するために文化祭を楽しみにしていると言っても過言ではない......くらいの一大行事!
それこそ、我らが爆恋会だ。
「ま、まぁ、だって僕たち2年生にとっては1番の見せ場だよ? 悔いを残すくらいだったら、当たって砕けろ精神で行くよ」
「おぉー。お前って見た目の割に根性あること言うよな」
「見た目の割って、なに!? こっちは真剣なんだけど!」
「京坂さんなー。めちゃくちゃモテてるよなぁー。だってクラスどころか学校中で人気だもんな? 今度の爆恋会でも、人気沸騰だろうけど、尾西大丈夫か?」
「ハードルを上げるようなこと言わないでくれ、太一.........」
「あははは、まあ、応援してるぜ? お前だってヒョロガリだけど、イケメンだし、良いやつだからな! もし成功したらラーメン100回分奢ってやる」
「病気になりそう......。うん、まあ頑張ってみるよ、ありがとう太一」
「おう!」
コツンとグータッチを交わして、俺らは再び熱唱しはじめる。
俺は爆恋会に登壇する訳ではないが、友達が本気で自分の意中の人に挑もうとしているのだ。
そりゃ全力で応援させてもらうぜ?
にしても、京坂八ツ羽さんかぁ......。美人や誰に対しても優しいという理由で、ここまで人気者になると、流石に同情してしまうというか......。
もう少し歌い続け、本日のカラオケ終了時間がきた。
尾西が駅の改札を通り抜けたのを見届けて、俺も帰路に着く。
みんな思い思い青春してるなぁー......。
まるで教師か保護者のようなことを思いながら、歩道を歩いていると......。
「ん?こんな時間に......、教室に誰かいるのか?」
そう呟いたのは、学校の横を横切っている最中だった。
夜も遅い。普通、教室の照明は全て消えているはずなのだが......。
少し気になって、立ち止まってみる。
周りの静かさもあり、道路からでも教室にいる人影と、会話が少しだけ聞こえてきた。
「−−−本当に、会長も参加するのですか?」
「当然よ。私がどれだけのおもいで−−−八ツ羽のことを思っていると? 今更この思いが揺らぐことはないわ。それとも、3年生である生徒会長は、爆恋会には参加せず、のうのうと雑務と受験勉強に勤しんでおけとでも?」
「い、いえ! そんなつもりは......! 私はただ、事の末路を心配しただけで......」
「ふん、杞憂なことね。こと生徒会長である私に失敗はない。ええ、今回の爆恋会、私は必ず京坂八ツ羽を振り向かせてみせるわ。絶対によ」
うへー、こんなところでも爆恋会の話をしているのか......しかもお目当てはまたまた京坂さん。
夜も遅いのに熱心なことで......。
でも、今の会話からするに、教室にいるのは......。
まあいっか。俺には関係ないし。難しいことは考えないでおこう。
しかし、この時の俺は知る由もなかった。
翌日、思わぬ人物からの知らせによって、京坂八ツ羽めぐる、恋愛戦争がさらに複雑で過激化することを−−−。
教室から聞こえたあの話声は一体......!?




