第九十八話 ウィルクレスト町の決戦
《ノクティア、まずは先制攻撃だ。削れるだけ削れ。ジャンク・グリフォンは残った敵を倒せ。ロズウェルはいつもどおりヘイトを集めておけ。だが、ガイウスが来たら解除だ。エクサスが対応してくれ。無理はせずにな。ユウマも念のため、できる限りディストーションを溜めておいてくれ》
各メンバーがアイマの指示に頷く。
「獄火炎!」
まずはノクティアの魔法攻撃だ。
地獄の炎が放出される瞬間、何人かの魔物が壁を作るようにガイウスの前を塞いだ。魔物を操って自分への攻撃は防ぐつもりか。
広範囲に渡る火炎が魔物たちを焼き尽くす。
多くに魔物が倒れていく……が、いつもほどは倒せていないようだ。
《アビスヴォイドの技術も進化しているようだ。単に魔族化するだけでなく、追加で強化されているようだ》
「ふん、鬱陶しいマネをしおって。サイウス、行け」
「え? 兄さん?」
それは明らかにオーガの上位種——魔物だった。長い二本の角と、真っ黒な瞳に、もはやヒト族のような知性は宿っていなかった。
あまりに変わり果てた姿に愕然とした。
「そんな……兄さんまで魔物化してしまうなんて……」
《強個体がいたか。やむを得ない。ディストーション・レート: 46%——ユウマ、エクサスに「エンカレッジだ。エクサスは「メテオ・スラストをオーガキングに喰らわせろ》
「エンカレッジ!」
僕はエクサスに即座にスキルを発動した。
オーガキングが、兄が迫ってきていた。
「メテオ・スラスト!」
オーガキングにエクサスの突きの一つ一つが刺さる。
しかしオーガキングは倒れず、槍を掻い潜ってエクサスに一撃を返そうと右腕を振り上げるが、その度に槍に突き飛ばされる。
一つ一つの突きが凄まじい攻撃力のはずなのに、オーガキングは倒れなかった。オーガキングがここまで耐久力が強いはずがない。
エクサスの突きは止まらず、さすがのオーガキングも膝を突き、前から倒れた。
兄は死んだのだ……決して好きな兄ではなかったが、それでも共に過ごし、育った兄をこんな形で失うのは納得のいくものではなかった。
「ふん、最後まで役に立たん長男だったな」
感傷に浸ることもなく、ガイウスが剣を構えた。ブラッドランス家の宝剣グラディウスだ……
エクサスはスキルの連続使用もあり、疲労がありそうだった。
ガイウスがオーガキング化した兄サイウスよりも強力なのは間違いないだろう。
《ロズウェル、「リディキュール」と「リバース・フォルティチュード」の同時発動だ》
「わかった……倒し切れるんか知らんが頼んだで」
ロズウェルがスキルを発動し、体が上下に反転する。それと同時にガイウスの注意がロズウェルに集中した。
「ほう、攻撃対象を限定させるか。鬱陶しい」
ガイウスがグラディウスを一閃する。
「デーモン・スラッシュ」
肉眼で捉えきれない速度の斬撃がロズウェルを襲った。
刃はロズウェルに届く前に止まったが、スキルがなければ耐久力の高いロズウェルでもどうなったかわからないほどの攻撃力なのではないか。
「攻撃の無効化か……しかし、いつまでもスキル効果が続くわけではあるまい」
「メテオ・スラスト!」
隙をついてエクサスが攻撃を繰り出し、槍の突きが何度もガイウスを襲った。
しかし、グリフォン・ランスの穂先は、ガイウスの肉体に一つの傷もつけていなかった。エンカレッジなしとはいえ、そこまで軽い攻撃ではないはずだ。
《ユウマはディストーションを溜めておけ》
「ディストーションを溜めても攻撃が通るかわからないよ」
《いいからやるんだ》
ガイウスの強さは尋常じゃない。もはやドラゴン種をも超える強さなのではないか。
戦闘中にもかかわらず、誰も何もできないまま時間だけが過ぎていった。僕だけが黙々と「ケイオス・ライオット」でバタバタと暴れていた。
「そろそろか」
ガイウスが呟いた。
「あかん、『リバース・フォルティチュード』が切れるで……」
「アイマ、エクサスに『エンカレッジ』したらいいのか?」
《いや、だめだ。いくらディストーション溜めても無駄だ》
その言葉に愕然とした。この場で、エクサス以上に火力が出せる者はいないじゃないか……
「ふっ、ヒト族最強などと言われてもそんなものか。ヒト族などしょせん、魔族の敵にはならんのだ」
ガイウスが宝剣グラディウスを高く掲げた。
ロズウェルのスキルが切れるタイミングを狙って攻撃するつもりだ。
「ユウマ、最後にもう一度だけチャンスをやろう。ブラッドランスの軍門に降れ。そうすれば誰も殺さずに済ませてやろう。だが断れば皆殺しだ」




