第九十六話 ウィルクレスト町での戦い
「ラスティ・ジャンク」のメンバーは馬車に乗り、エクサスの「ジャンク・グリフォン」はそれぞれの馬で急ぎ行軍した。
ウィルクレスト町に到着すると、そこはすでに戦火の真っ只中にあった。
無数の魔獣たちに攻撃されているヒト族の人々は防戦一方という態であった。
「やっぱりブラッドランス領以外も攻め込まれているじゃないですか。って、あれ?」
先ほどまで一緒にいたはずの兵士が姿を消していた。
《あの兵士ならもう逃げたぞ》
マジか。ここまで来たらもうお役御免ということか?
「とりあえず、兵士たちを助けよう」
《ああ。だが、この混戦ではノクティアの魔法は味方を巻き込んでしまうから、物理攻撃主体だな。できるだけ、ロズウェルがヘイトを集めて、群がったところを皆で一網打尽にするといいだろう》
ロズウェルが「リディキュール」を発動すると、周辺の魔獣が一気にロズウェルに向かってきた。
しかし、魔獣たちがロズウェルに達する前に、リンネ、エクサスと「ジャンク・グリフォン」の兵士たちが簡単に魔獣たちを倒していった。魔獣たちはロズウェルに気を取られていることもあり、攻撃自体が簡単にヒットするのだ。
今まではほぼリンネ一人で物理攻撃を担っていたが、攻撃力やスピードはリンネに劣るものの、見事な連携による波状攻撃を見せる「ジャンク・グリフォン」の面々による魔獣駆逐は気持ちいいくらいに効率的で、あっという間に周囲の魔獣は全滅していた。数百には上るような魔獣が数分で片付いたのだった。
僕たちは助けた兵士たちに状況を尋ねた。
「何の前触れもなく、魔獣がブラッドランス領から押し寄せてきたんです。必死に応戦したんですが、魔獣が強力で……。助けてくださり、ありがとうございました」
「いえ、同じウィルクレストの領内のことなのですから、当然です」
「? 同じ領内? もしやジャンク軍ですか? もしやあなたは英雄の『愚者』ユウマ・ジャンクでは? これは心強い」
兵士たちが「これで町は助かるぞ!」と勝手に盛り上がってくれた。
何だかむず痒いが、一生『愚者』のレッテルは残るんだな。いや、僕はもう「愚者」に誇りすら感じている。いいじゃないか。
「そうだ、マーガレット様はどちらにいらっしゃるかご存知ですか? 保護させていただきたいのですが」
そう問うと、盛り上がっていた兵士たちは一斉に急に暗い表情をした。
「マーガレット様は連れ去られました」
「え!?」
《間に合わなかったか》
「どこに連れ去られたんですか?」
そう尋ねたが、兵士たちは首を振った。
《魔獣が発生しているブラッドランス領だろう。急ごう。リンネを先行して行かせよう》
「え? 一人で?」
《ああ。もちろん戦闘のためではない。隠密行動してもらう必要がある》
「隠密行動? 何をさせるの?」
《ブラッドランス伯爵家の屋敷に侵入するんだ。今なら警備も手薄だろう》
「僕の生家?」
《そうだ。だからユウマの助けも必要だ》




