第九十四話 急報
町にやってきたゼルミナたちは、町の姿に驚愕し、言葉を失っていた。
何百年、何千年と過ごしてきた魔素の森は、彼らにとって常に魔獣と荒廃の場所だったのだ。その魔素の森の中にこのような町ができるとは思ってもいなかっただろう。
しかもそこはヒト族やエルフ族が主体となっている社会ではなく、あらゆる種族が入り混じって、より良い町にしていこうと協力し合っているのだ。
ゼルミナたちにも家に入ってもらい、診療所の開設準備をお願いした。必要なものがあれば教えてくれるようにも伝えた。アーレンに丸投げするんだけれど。
それから防衛時に倒した多くの魔獣の素材の整理ができたようなので、アーレンがクラフトに使うものを除いて、またチャップに素材を売り捌いてきてくれるように頼んだ。
今回はリュシアを同行させることにした。チャップ一人だとちゃんと売って来ないので。御者も領民の中でできそうな人を見つけるように言った。
それなりの金額にもなるだろうから、何か役に立つものを見つけたら、チャップとリュシアの裁量で買ってくるように頼んだ。
町が、ジャンク領が充実していくのを感じる。皆が充実して働いてくれているのがわかる。
今は皆、役割がある領民たちだけれど、いずれは何もできない、しない人でも充実して生きていけるような社会になるといいな、と思った。
と、そんなことを夢想していると、屋敷のドアを激しく叩く音がした。僕は一緒にいたアイマと慌てて広間に行き、ドアを開けた。
するとそこに一人の兵士らしき者がいた。
左腕に深い切り傷を負っており、息を切らしていた。
「どうしました? 大丈夫ですか?」
「……助けてください」
「何があったんです?」
「私は……ブラッドランス領の兵士です」
ブラッドランス領? 父の領地だ。
「何があったんです?」
「魔獣の群れがブラッドランス領に襲ってきたんです……兵士だけでは対応できず……救援の依頼に来ました」
軍事費のために税金を搾り取って、軍を強化しているんじゃなかったのか? 税金も取るだけ取って、領民も守れないなんて……なんてひどい領地なんだ……
しかし助けないわけにはいかない。
「わかりました。では救援に行きます」
兵士の顔がパッと明るくなった。
「ありがとうございます!」
「傷の手当てをしたら行きましょう」
引っ越してきたばかりのゼルミナのところに行き、キュアをお願いすると、瞬く間に兵士の傷が治っていった。
「あれ? 持病の腰痛も治ってる」
傷どころか、すべての異常が治るらしい。
さあ、人選をしてウィルクレストの町に出発だ。




