第九十一話 襲撃
マーガレットが去り、夕刻近くになると、アイクたちが新しい領民たちとともに、何台もの荷車に米を山盛りに積んでいた。
荷車はアーレンが急遽用意したものらしく、まだ休まず作業していたようだ。申し訳ない。
そうして大量の米を皆で手分けして炊いた。もちろん釜もアーレン製作のものだ。明日以降、全家庭の分も作るというが……早く休ませてあげたい。
屋敷で炊いたご飯を皆に持ち帰らせた。米はまだまだ余っているので、しばらく備蓄できそうだ。アーレンには米を保管しておく倉庫も作ってもらわないといけないな……
食糧も備蓄できるようになれば、時間ができてくるだろうから、他の仕事やお店なんかもできて、さまざまな職業も生まれて、もっと町の多様性が広がりそうだな。
「明日はまた別の作物を育ててみます」
アイクがそう申し出てくれた。食生活も充実していきそうだ。
そうして皆で食事をしていたときだった。ロズウェルが突然ご飯を食べるスプーンを持つ手を止めた。
「どうした、ロズウェル? おいしくない?」
こんなおいしいご飯に異常なんかあったら嫌だな、と思いながら尋ねた。
「敵だ」
「え? 食事中だけど」
<<領主がそんなこと言っている場合か。「プリズナー・サーチ」にかかったのか?>>
「ああ、間違いない」
<<そうか。どれくらいの規模だ?>>
「全部で1000はいるな。大物も一匹いるぞ」
<<多いな。アビスヴォイド教団が関わっている可能性が高そうだな>>
「外の農地も踏み荒らされてしまいそうだな」
せっかく耕した農地なのに……
「農地はまたすぐ耕せるから気にしないでください」
アイクが言った。
<<今回は冒険者パーティー「ラスティ・ジャンク」は無しで防衛を試みよう>>
「え? 1000匹もいるんでしょう? 防衛兵器も作ったけれど、誰も練習していないし」
<<エクサスの「ジャンク・グリフォン」に任せるんだ。やつらならすぐ覚えるだろう>>
「じゃあ、呼んでこないと。あ、でもどの家にいるかわからない……あ、リュシアに名簿作ってもらったんだった」
<<皆、屋敷の近くだ。外で大声出して呼べば集まるだろう。追ってアーレンに警鐘も作ってもらおう」
外に出ると、かすかに足音が聞こえる気がした。
僕たちは、周囲の家々に聞こえるよう、大声で敵襲を知らせた。
するとすぐに続々と「ジャンク・グリフォン」のメンバーが集まってきた。
「敵襲か?」
誰よりも真っ先に将軍エクサスが尋ねてきた。
「そうなんだ。撃退をお願いしたい。数が多そうだから、防衛兵器も使ってくれ」
「防衛兵器か。それはいいな。どうやって使うんだ?」
「アイマ、説明してくれる?」
アイマが兵器の使い方を、エクサスとジャンク・グリフォンの面々に手短に説明した。
「把握した。任せておけ。いくぞ、ジャンク・グリフォン!」
エクサスが強く宣言した。
魔獣たちの足音は大きくなってきており、地面を伝って振動までが伝わってきた。




