第八十九話 防衛兵器
翌日からさっそくアイク、イサク、ウイクの三人が城門の外に出て、新領民たちと農地の開拓をすることになった。
僕とアイマはアーレンと会議室に集まった。
アーレンが十分な数の家も建ててくれたので、次の仕事に入ることにした。連日作業ばかりで申し訳ないのだが、次が終わったらちょっと休んでもらおう。
<<次は防衛用の兵器だ>>
「城壁ができたから魔獣の侵入は防げそうだけど、追い返すか倒すかできないと万全じゃないよね」
<<そうだ。それに俺たちが外に出ていても、町が防衛できないといけない>>
「そうだね。アイマには防衛兵器のアイデアはあるの?」
<<そうだな。中途半端な物理兵器では、ここ魔素の森で生きていくのは無理だろう>>
「物理でないってことは魔法的なもの?」
<<城門前に強力な物理兵器と各方位に広範囲の魔法兵器が欲しいな>>
アイマが兵器の細かい仕様をアーレンに説明した。アーレンは、いつも通り、スキル「オールラウンド・デザイン」で何度かめちゃくちゃな失敗設計を出力し、突然完璧な設計を作り上げた。
<<うん、いいだろう。アーレン、製作前に、一つスキルを取得してくれ>>
・〈オールラウンド・インクリメント〉〔製作物の能力が2倍に向上/消費MP30〕
<<MP消費が大きいから大量生産には向かないが、一撃必殺の兵器には使えるスキルだ>>
さっそくアーレンが製作に入った。
まずは城門を守る物理兵器だ。
城門前に殺到した敵を粉砕する「粉砕槌」だ。
ワイヤーに、底が平らになった巨大なハンマーをつなげて、滑車で吊り上げて、敵が城門前に迫ったら一気に落として敵を押し潰すというなかなかに恐ろしいシロモノができた。
ハンマー部分は高密度の石と鉄に秘伝のアースドラゴンの骨粉が混ぜられており、強度は申し分がない。矢は敵に合わせて、鏃がワイバーンの爪のものから、グリフォンの爪のものまで用意されている。
オールラウンド・インクリメントで能力も向上させられているので、上位魔獣でも即死させられるくらいらしい。
それから、遠方の強敵や、空からの敵を射抜く「回転連弩」だ。
回転する円筒のマガジンが発射ごとに矢を装填し、連続で矢を発射できる兵器だ。
弦はグリフォンの腱で作られ、台座と筒は強化鉄でできている。
こちらもオールラウンド・インクリメントで射程距離も威力もかなり高くなっている。
最後に、雑魚敵を一掃する「魔導蓄積砲だ。
「砲」と言うからには、砲筒みたいなものを想像していたのだが、半球型の水晶体の簡素な置物のようなものだった。
水晶に触れて魔法を発動すると、魔法を記録して、必要なときにその魔法を発動できるらしい。動力源として魔石が必要になる。魔力量は魔石次第にはなるが、オールラウンド・インクリメントによる強化で、雑魚どころか中位程度の魔獣でも一掃できるとのことだった。
ノクティアに攻撃魔法を記録しておいてもらうことになる。
なかなか協力そうな兵器が揃ったな。できれば使わないで済めばよいけれど。
大車輪の活躍のアーレンは少し休んでもらいつつ、アイクたちの農作で必要な道具があれば、それを製作することだけをお願いした。




